【IPO】 4074 ラキールについて考察してみた

【IPO】 4074 ラキールについて考察してみた

PERAGARUアナリスト

沿革

2005年6月、企業向けアプリケーションの部品化と、再利用できるプラットフォーム開発を目的に株式会社レジェンド・アプリケーションズとして東京都にて設立された。2011年9月、株式会社ワークスアプリケーションズの100%子会社となり、別子会社の株式会社ワークスソリューションズと事業統合。その後、2017年10月、経営陣によるMBOを目的にLAI HOLDING株式会社を設立し、翌11月に株式会社ワークスアプリケーションズから全株式を取得、商号をレジェンド・アプリケーションズへ変更。2018年12月、株式会社マーベリックとその子会社の株式を100%取得した後に吸収合併する。2019年10月、現在の商号に変更。2021年7月、東証マザーズに上場。2022年4月、東証の市場区分の見直しにより、グロース市場へ移行した。大企業向けのシステム開発サービス・システム保守サービスと、DXを推進するためのプロダクト・サービスをおもに提供する。

株主構成

四半期報告書によると、2022年6月末時点の筆頭株主は代表取締役社長の久保努氏で44.5%を保有する。久保氏の資産管理会社である株式会社Kコーポレーションの保有分3.2% をあわせると47.7%となる。次いでKST有限責任事業組合が8.9%を保有。以下は保有割合5%未満で取締役4名や国内外の金融機関がならぶ。外国人株式保有比率は10%未満。

取締役会

取締役は8名(社内6名、社外2名)、監査役は3名(社内1名、社外2名)。監査役会設置会社である。代表取締役の久保氏含め、社内取締役はラキールの前身である株式会社イーシー・ワン出身者が5名。ほかは三菱商事、和光証券株式会社(現:みずほ証券株式会社)などの出身。なお、イーシー・ワンの出身者のうち平間恒浩氏と浅野勝己氏、川上嘉章氏の3名は現在のタタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社出身で1999年頃から株式会社イーシー・ワンに移っている。雄谷敦氏は日立ハイ・ソフトウェアなどを経て2002年7月から株式会社イーシー・ワンである。

代表取締役会の経歴

代表取締役社長の久保努氏は、1964年9月生まれ。23歳当時、現在のタタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社へ入社し、その後1999年2月から株式会社イーシー・ワンSI事業部長を経て取締役まで務め、Ec-One China Holding, Inc.や北京一希望信息技術有限公司の取締役や董事長等の要職を歴任。2005年6月にレジェンド・アプリケーションズを設立した際に代表取締役社長に就任。株式会社ワークスアプリケーションズでは取締役も務めた。2017年10月、LAI HOLDING株式会社(現:ラキール)設立時に再度代表取締役社長となり現在にいたる。

報告セグメント

LaKeel事業の単一セグメント。2022年12月期第3四半期累計の売上高5,130百万円のうち、プロダクトサービスが2,977百万円で58.0%プロフェッショナルサービスが2,153百万円で42.0%である。

2022年12月期 第3四半期 決算説明資料

事業モデル

プロフェッショナルサービスは、主に大手の建設会社、不動産会社、金融機関(銀行、生損保、リース)向けの基幹システムを開発・保守運用する。なお、一部はビジネスパートナーへの委託。後述するLaKeel DXの導入時に、専門技術を持たないまたはリソース不足のユーザー企業向けに開発人材を投入し、実装のサポートも提供する。
新規顧客向けのシステム開発はフロー収入として、既存顧客向けのシステム開発や保守案件はリカーリング型レベニューモデルで安定収入源となる。2021年12月期の売上高のうち97.6%をリカーリング型が占める。
プロダクトサービスは、LaKeel DX上で稼働する製品を順次リリース。LaKeel上のデータを経営戦略に活用するLaKeel BI(ビジネスインテリジェンス)など、LaKeel DXの機能部品群、開発基盤、運用基盤を含む。LaKeel DXの活用やLaKeel DX上に収集されたデータ活用のコンサルティングサービスもおこなう。サブスクリプション型レベニューモデルで、製品ラインナップ拡充により顧客数が増加し売上成長へ貢献している。
2019年5月にリリースしたLaKeel DXは企業の業務アプリケーション開発環境を提供するサービス。ユーザー企業はサーバー運用のためのクラウドプラットフォームの上で、アプリケーションの開発・運用ができる
企業のシステム開発(デジタルビジネスプラットフォームの構築)において、必要となる部分的な機能部品(ファイル管理、検索、マスタ連携など)を数多く用意し、それらの自在の組み合わせによってシステム開発を可能としており特許も取得済。このようなマイクロサービスアーキテクチャである点が最大の特徴
なお、LaKeel DX上でのユーザー企業による機能開発も可能。各機能は大手クラウド(サーバー)事業者固有の技術に対応しており、アマゾン、マイクロソフト、Googleなどの大手クラウド事業者ごとの仕様の違いに縛られないシステム開発を実現しており、乗り換えもできる。また利用料の支払いは機能ごとのため、開発費用を抑えながら少人数でシステム開発・改変できる点も特徴である。
DXの国内市場は2019年度から2027年度までに2.7倍の規模に拡大するといわれており、成長が期待できる分野だ。

2022年12月期 第3四半期 決算説明資料

競合他社

LaKeel DXのように、基盤を特定のクラウド(サーバー)事業者に限らずコア機能の上にアプリが存在し、自社開発機能も載せられるサービスは珍しい。基盤を限定する形ではSalesforceやサイボーズのKintoneなど類似のサービスが一部存在する。
LaKeel BIの競合は数多く存在し、アプリ開発環境の提供をする各社で提供があり、 AmazonからはAmazonQuickSightが、セールスフォース・ドットコムからはTableau CRM、IBMからはIBM Cognos Analytics、SAPジャパンからはSAP BusinessObjects Business Intelligenceなどが提供されている。

連結の範囲

連結子会社を3社持つ。3社とはLegend Applications China Holding, Inc,、北京利衆得応用技術有限公司、株式会社ZESTである。
北京利衆得応用技術有限公司はLaKeel製品の開発拠点として、株式会社ZESTはコンサルティングサービス向けに開発人材供給や、金融機関向けの専門エンニジニア派遣等を行う。

強み・弱み

ソフトウェア開発の世界では、AWS, GCP, Azureなどのクラウド(サーバー)事業者が提供するサービス以外に、サーバー乗換が可能なサービスは一定数見受けられるが、同社のようにクラウド(サーバー)事業者の乗換を可能とすることを前提に構築され、特徴として前面に押し出しているサービスは珍しい
一方で、システム内のデータを活用しビジネスインテリジェンスを実行する段階においては、様々なサービスが存在する。BIの競合他社比での性能の優劣も、プラットフォームとしてLaKeel DXを用いるか否かに影響すると推測でき、特筆すべき特徴がみられない。またLaKeel自体の知名度は今後の課題となるだろう。
LaKeel DXが三菱商事に導入実績を、プロフェッショナルサービスにおいて前田建設工業や大東建託などへの販売実績を持つ。社長の久保氏を含めた経営陣はワークスアプリケーションズ時代などを通じて日系トップクライアントとのリレーションを構築しているとみられ、同社の成長に貢献してきたと推測される。

KPI

LaKeel製品の解約率と、安定的な収益源となるリカーリング型の売上高はKPIとなりうる。
①LaKeel製品の解約率:2021年3月期末1.1%(前期末0.8%)
②リカーリング型の売上高:2021年3月期3,807百万円(前期比▲9.5%)

有価証券報告書

業績

過去3期の業績をみると、売上高は5,300百万円から5,800百万円で推移している。一方、経常利益は右肩上がりで182百万円から493百万円へ2.7倍となった。また自己資本比率も順調に上昇しており、30.9%から51.4%へと成長した。営業CFはプラス推移、投資CFは恒常的にマイナスである。

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