5202 日本板硝子の業績について考察してみた

5202 日本板硝子の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

四半期業績推移随時更新中

(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2023.Q4 2023.03 197,296 10,657 5.4%
FY2024.Q1 2023.06 207,954 14,578 7.01%
FY2024.Q2 2023.09 212,214 11,450 5.4%
FY2024.Q3 2023.12 192,528 6,065 3.15%
(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2017.Q4 2017.03 150,070 9,798 6.53%
FY2018.Q1 2017.06 145,249 8,606 5.92%
FY2018.Q2 2017.09 148,748 9,020 6.06%
FY2018.Q3 2017.12 151,344 8,320 5.5%
FY2018.Q4 2018.03 153,556 9,686 6.31%
FY2019.Q1 2018.06 158,414 9,690 6.12%
FY2019.Q2 2018.09 149,729 8,166 5.45%
FY2019.Q3 2018.12 151,326 7,859 5.19%
FY2019.Q4 2019.03 153,320 11,140 7.27%
FY2020.Q1 2019.06 147,066 8,817 6%
FY2020.Q2 2019.09 141,559 6,059 4.28%
FY2020.Q3 2019.12 137,203 3,155 2.3%
FY2020.Q4 2020.03 130,350 3,146 2.41%
FY2021.Q1 2020.06 91,871 -609 -0.66%
FY2021.Q2 2020.09 129,660 3,847 2.97%
FY2021.Q3 2020.12 135,819 4,786 3.52%
FY2021.Q4 2021.03 141,874 5,043 3.55%
FY2022.Q1 2021.06 147,678 7,161 4.85%
FY2022.Q2 2021.09 143,009 5,539 3.87%
FY2022.Q3 2021.12 152,274 1,824 1.2%
FY2022.Q4 2022.03 157,607 5,456 3.46%
FY2023.Q1 2022.06 177,909 8,265 4.65%
FY2023.Q2 2022.09 197,742 6,172 3.12%
FY2023.Q3 2022.12 190,574 9,718 5.1%
FY2023.Q4 2023.03 197,296 10,657 5.4%
FY2024.Q1 2023.06 207,954 14,578 7.01%
FY2024.Q2 2023.09 212,214 11,450 5.4%
FY2024.Q3 2023.12 192,528 6,065 3.15%

沿革

1918年日米板硝子株式会社設立(本店所在地:大阪市)、1931年社名を日本板硝子株式会社に変更、1950年東京・大阪・神戸の各証券取引所に株式上場した。2000年英ピルキントン社の株式を10%取得、2001年英ピルキントン社への出資比率を20%に引き上げて持分法適用会社化、2004年本店所在地を大阪市から東京都港区に移転、2006年英ピルキントン社を完全子会社化した。その後グローバル展開を推進している。建築・自動車用板ガラスの大手メーカーである。

株主構成

有価証券報告書によると、2020年9月30日現在の筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)(自己株式除く発行済株式総数に対する所有割合6.70%)である。以下は5%未満の保有で日本板硝子取引先持株会1.41%を除いて他はすべて、国内外の信託銀行等の信託口である。なお外国人保有割合は2020年6月4日現在で18.90%だった。

取締役会

取締役8名(社内2名、社外6名)で構成されている。そのうち、社外取締役の5名は監査委員も兼任し、監査委員会を構成する。社外取締役・監査委員会委員長の山崎敏邦氏は日本鋼管株式会社(現JFEホールディングス、5411)出身、社外取締役・監査委員会委員の木本泰行氏は株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)出身、社外取締役・監査委員会委員のヨーク・ラウパッハ・スミヤ氏は立命館大学経営学部教授との兼務、社外取締役・監査委員会委員の石野博氏は三菱商事(8058)および関西ペイント(4613)出身で関西ペイント相談役との兼務、社外取締役・監査委員会委員の皆川邦仁氏はリコー(7752)出身で参天製薬(4536)社外取締役との兼務、社外取締役の黒井義博氏は三菱商事および三菱自動車(7211)出身でジャパン・インダストリアル・ソリューションズ株式会社顧問との兼務。
なお2020年7月16日付でギュンター・ツォーン氏と松崎正年氏が取締役・監査委員会委員を退任し、石野博氏と皆川邦仁氏が取締役・監査委員会委員に就任、黒井義博氏が社外取締役に就任した。また英ピルキントン社出身のクレメンス・ミラー氏は2020年12月31日付で取締役・代表執行役副社長兼COOを退任した。

代表取締役の経歴

取締役・代表執行役の森重樹氏は1958年7月生まれ。1981年4月入社、上席執行役員などを経て2015年4月代表執行役社長兼CEOに就任(現任)、2015年6月取締役に就任(現任)した。
取締役・代表執行役副社長兼CFOの諸岡賢一氏は1956年12月生まれで、株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)出身。SMBC Securities, Incの社長を務めた後に、2006年12月に同社のロンドン駐在の経理部部長として入社。上席執行役員などを経て2013年6月取締役に就任(現任)、2016年4月代表執行役副社長兼CFOに就任、2021年7月16日代表執行役副社長兼CAO兼CROに就任(現任)した。

報告セグメント

建築用ガラス事業、自動車用ガラス事業、高機能ガラス事業、その他の4セグメントである。2021年3月期の売上高の構成比は建築用ガラス事業43.2%、自動車用ガラス事業49.1%、高機能ガラス事業7.4%、その他0.3%。営業利益は建築用ガラス事業15,670百万円、自動車用ガラス事業1,802百万円、高機能ガラス事業6,707百万円、その他▲11,112百万円と、利益の太宗を建築用ガラス事業で稼ぐ。その他には全社費用、連結調整、各セグメントに含まれない小規模事業、英ピルキントン社買収に伴って認識された無形資産償却費などが含まれる。

事業モデル

建築用ガラス事業は建築材料市場向けの板ガラス製品・内装外装用ガラス製品、および太陽電池パネル用ガラスの製造販売、自動車用ガラス事業は新車組立用および補修市場向けガラス製品の製造販売、高機能ガラス事業はディスプレイ向け薄板ガラス、プリンター向けレンズおよび光ガイド、各種ガラス繊維製品などの製造販売を展開している。ガラスの製造には珪砂やソーダ灰などの原料と、重油や天然ガス等の燃料が必要となる。
2020年3月期の有価証券報告書では、地位別の売上高は欧州38.6%、アジア34.3%、米州27.1%であった。生産拠点は、国内(舞鶴事業所、千葉事業所、相模原事業所、国内製造子会社など)、海外(英ピルキントン社グループなど)に展開している。

競合他社

国内ではAGC(5201)およびセントラル硝子(4044)と建築用・自動車用ガラスで競合している。特に最大手のAGCと比較されるが、AGCがディスプレイ用ガラスや化学品などにも展開しているのに対して、同社は高機能・高付加価値ガラス製品などへの展開に遅れ、既存事業の収益性(利益率)も低いという印象が否めない。

連結の範囲

2020年3月期末時点でグループは同社、連結子会社190社、持分法適用会社24社で構成されている。主要な連結子会社は英ピルキントン社グループである。

強み・弱み

建築・自動車用板ガラスの大手メーカーとしての高いブランド力が強みだが、需要が景気変動の影響を受けやすいことに加えて、90%以上をこの2業界に依存する点は弱み。新興国のガラスメーカーの増加や製品の汎用化などで価格競争が激しいため、売上が伸び悩み収益性も低いことが課題である。

KPI

事業部門別の売上高および営業利益の推移がKPIとなり得る。2020年3月期第4四半期~2021年3月期第1四半期は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う経済収縮の影響を受けたが、この要因を除いても、売上高が伸び悩み、営業利益も漸減傾向である。
・事業部門別の売上高および営業利益
・為替動向
・原材料や燃料の調達コストの動向

業績

2020年3月期以降は新型コロナウイルスの影響を受けて減収減益が続くため、2016年3月期~2019年3月期で連結業績(IFRS)の推移を見ると、売上高は2016年3月期の629,172百万円から2019年3月期の612,789百万円まで概ね横ばいで推移している。当期純利益は2016年3月期に▲49,838百万円となったが、その後は構造改革などで黒字転換し、2019年3月期には13,287百万円まで改善した。なお2020年3月期の当期純利益は▲18,925百万円、2021年3月期の当期純利益は▲16,930百万円であった。
親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)は概ね10%台で推移(2020年3月期は9.6%に低下)している。ただし営業キャッシュ・フローは継続してプラスを維持しており、当面の財務の健全性に大きな懸念はないだろう。
今後は、構造改革による既存事業の収益性改善、高付加価値の新規分野への展開、有利子負債削減による財務改善が課題となる。

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