4734 ビーイングの業績について考察してみた

4734 ビーイングの業績について考察してみた

PERAGARU管理人

ビーイングの事業概要

同社は1984年に三重県津市にて、イリイ三重株式会社として設立され、1987年に商号を株式会社ビーイングに変更し、同年に土木工事システム「ガイア」の販売を開始している。現在においても土木工事積算システム「Gaia(ガイア)」シリーズを中心とした建築業向けアプリケーションと、プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメントシステムを中心としたアプリケーションの開発・販売が同社の主要事業となっている。
また、同社は2004年には株式会社ジャスダック証券取引所に上場し、株式会社ジャスダック証券取引所と大阪証券取引所の合併、東京証券取引所と大阪証券取引所の統合を経て、現在は東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場している。同社の株主構成を見ると、同社の創業者であり同社の代表取締役会長である津田能成氏が19.4%、同氏が代表取締役を務める有限会社トゥルースが36.3%、同氏の妻であり同社の取締役監査等委員を務める由美子氏が4.8%の株式を保有しており、発行済株式の約6割の株式が創業者一族によって保有されている。なお、同社の代表取締役社長である津田誠氏は津田能成氏の長男であり、経営についても創業者一族によって運営されている会社であることがわかる。
また、同社の報告セグメントは、建設関連事業及び設備関連事業に加え、2020年3月期よりグループの経営管理体制を見直し、生産性向上コンサルティング事業を建設関連事業から独立した報告セグメントとしている。なお、同社においては建設関連事業が売上高の約7割を占めており、建設関連事業が同社の主力事業となっている。
同社における連結子会社は、前述の通り同社から分社化され生産性コンサルティング事業を営む株式会社ビーイングコンサルティングのほか、設備関連事業を行う株式会社プラスバイブラス、同社から建設関連事業における製品の開発を受託するミャンマーの海外子会社Being(Myanmar)Co.,Ltd、2019年5月に子会社化したソフトウエア受託開発会社である株式会社ラグザリアの計4社を連結子会社としている。

建築関連事業

同社の建築関連事業の中でも主力となるは、土木工事積算システム「Gaia(ガイア)」シリーズである。同システムは誕生以来30年に渡る実績を誇り、積算ソフトのトップブランドとして認知されている。また、同社においては、土木工事積算システムのほか、ASP型の情報共有システムである「BeingCollaboration PM」や入札マネジメントシステムである「BeingBid」、TOC(制約理論)の考え方に基づく工程管理型マネジメントシステムである「BeingProject-CCPM」等の製品があり、これらの建設業向けの業務効率化を目的とした製品が同社の建築関連事業となっている。同社のように建設業向けのソフトウエア開発及び販売を行う上場企業としては、コンピュータによる設計支援ツールであるCADシステムを開発・販売している福井コンピュータホールディングス株式会社<9790>がある。同社においては建築CADソフトウエアの開発を主力事業としており、一部工程管理に関するソフトウエア等一部競合する内容もあるものの直接的には競合していないと考えられる。

土木工事積算システムについて

積算とは、工事等を行う前に、材料費や労務費、経費などの各工事における工程ごとの費用を予測し、それらを積み上げて工事全体の費用を算出することである。土木工事は金額が多額となる取引であり、公共工事では入札により工事価格を決定したり発注者から事前に工事にかかる見積りを依頼され、当該見積額をベースに工事前に工事契約を締結したり等、工事前に工事会社への支払額が決定されることがほとんどである。そのため、工事の見積もりを実際より低く見積もってしまうと工事会社が工事の赤字を負担することになり、一方で、工事の見積もりを実際より高く見積もってしまうと入札で他社に負けてしまい受注が取れなくなってしまう。土木工事会社にとっては土木工事積算により、事前に工事にかかる費用を正確に見積もることが重要となるのである。土木工事積算システムは、システム内の膨大なデータをもとに、使用する材料の数量等、必要なデータを入力するだけで短時間で正確な見積もりをすることが可能であるため、入札により工事を受注するような工事会社にとっては必要不可欠となるシステムである。
同社の土木工事積算システムである「Gaia(ガイア)」シリーズは、土木工事積算ソフトの中でも機能が高くブランド力もある一方、導入コストは高額となっているため、主として公共工事の入札に参加するような、規模の大きい建設業者向けの土木工事積算システムとなっている。「Gaia(ガイア)」シリーズの競合となる高価格帯の土木工事積算システムとしては、株式会社コンピュータシステム研究所の「ATLUS(アトラス)」シリーズや、吉備システム株式会社の「メビウス」シリーズが挙げられるが、両社とも非上場会社である。

土木工事積算システムのクラウド化について

同社は2020年8月1日において、「Gaia(ガイア)」シリーズから初のクラウド版となる「Gaia Cloud」の発売を開始した。「Gaia Cloud」は単に従来版をクラウドに対応させたのみでなく、データ構成を一から作り直し、これまでの「Gaia(ガイア)」シリーズの更新の中でも過去最大の更新を行ったことにより、使いやすさをさらに追及したシステムとなっており、同システムはクラウド環境のメリットに加え、設計書を読み込むだけで積算が完了する「全自動積算」などの機能により、正確で効率の良い積算ができることが期待できるシステムとなっている。
また、従来のオンプレミス版ではソフトウエアの購入企業において購入後自社運用する必要があり定期的に最新データのダウンロード等の作業が必要となっていたが、クラウド版においては常に最新のシステムや金額データを使った積算が可能となり、ハードウェアの故障等によるデータ損失も防げる。さらに、データがクラウド上に保存されているため、いつでもどこからでも操作が可能となり、PCの入れ替え等によるデータの引継ぎも必要無い点もユーザーのメリットとなる。
システムの導入段階においても、オンプレミス版においては初期費用が高額となり設備の導入にも時間がかかるため、システム導入の敷居が高かったものが、クラウド版においては初期費用が安価となり申し込み後すぐに利用できるようになり、今後システム導入を検討する企業が増えることが期待できる。一方で、当該クラウド版の普及が同社の業績に与える影響を考えると、クラウド版は販売初年度に認識する売上が小さくなるため、クラウド版の導入割合が増加していく時期においては売り上げが一時的に減少することになる。従って、直近の決算においては一時的に業績が悪化する可能性があることに留意しておく必要があると考えられる。一方でクラウド版の導入が進むと、販売後の月額利用料等による収入はこれまで増加していくため、ストック収入型のビジネスモデルとなり、長期的に安定的収益が得られることが期待できるであろう。

設備関連事業

同事業は同社から子会社である株式会社プラスバイプラスに商品を供給し、同子会社から顧客に対してソフトウエアの供給を行っており、電気設備業及び水道設備業向けCADソフトが主力商品となっている。なお、CADとはコンピューターを用いた設計支援ツールのことである。
また、設備業向け現場台帳管理ソフトである「要~KANAME~」も近年販売拡大に注力しており、売り上げを伸ばしている。
同社においては、建築関連事業が主要事業となっており、顧客も主に公共工事の入札に参加する建設業者向けとなっていることから、財源が削減されることにより公共工事が抑制されたり建設業者の淘汰が激しくなる場合には同社の業績に大きな影響を与えることとなる。そのため、建築関連事業への依存度を下げていく方針であり、設備関連事業を含む建築関連事業以外の事業の拡大が今後の課題となっている。

生産性向上コンサルティング事業

同社においては、2019年において同社における生産性コンサルティング事業を株式会社ビーイングコンサルティングに子会社として分社化し、以降同子会社において生産性向上コンサルティング事業を行っており、同事業における生産性向上コンサルティング事業としてのソフトウエアは、プロジェクト管理ソフトの「BeingManagement3」がある。
プロジェクト管理ソフトではMicrosoft製品である「Microsoft Office Project」が有名であるが、当該海外製品を除くと同製品は国内No1のシェアを誇っている。また、同商品はシャープ株式会社のAQUOSスマートフォン事業におけるマネジメント・イノベーションやマツダ株式会社の新技術を用いた新車の開発計画等、大手企業に導入された実績もあるシステムである。
昨今においては新型コロナウィルスの感染拡大の影響に伴い、顧客企業がテレワークや自宅待機を実施したため、予定していたコンサルティング契約のほとんどが延期となり、オンライン環境でのコンサルティングや研修コンテンツの開発に取り組んだものの、2020年12月期第1四半期(2020年3月期)における売上高は大幅に減少し、同事業は新型コロナウィルスの感染拡大による大きな影響をうけたものの、前述の通り建築関連事業への依存度を下げていく方針から、コンサルタントの採用、教育投資の充実を行い、組織体制の構築を進めてており、今後も同事業の拡大を目指していくものと考えられる。

ビーイングの財務状況と経営指標

財務状況を見ると2020年12月期第1四半期(2020年3月期)においては総資産は前期末比較で84百万円減少の7,868百万円となった。総資産の主な減少要因としては、現金及び預金が273百万円増加した一方、当四半期において売上が減少したことに伴い受取手形及び売掛金が446百万円減少が主な要因である。
財務状況を見ると、経営の安全性を示す自己資本比率は前期末49.3%から当四半期末48.4%と前期と比べ下落しているものの概ね横ばいである。自己資本比率が50%を下回っており一見自己資本比率は低いように見えるものの、同社の負債額のうち概ね60%は資金の流出を伴わない前受収益及び長期前受収益であり、有利子負債も0円のいわゆる無借金経営であることを鑑みると財務状況は非常に健全な状態であると言えるであろう。なお、同社の前受収益及び長期前受収益は土木工事積算システムの販売に際し、販売時点に向こう5~6年間のプログラムの更新メンテナンス保証の対価として受け取った料金のうち、期間未経過分に相当する金額である。つまり、前受収益については1年以内に売上となり、長期前受収益については約6年以内に売上となる科目であるため、同社の将来の収益予測においては重要な勘定科目となるであろう。
また、収益性については営業利益率も前年同四半期においては17.8%であったものの、同四半期においては5.38%と下落している。これは、前期に取得した株式会社ラグザイアに関するコストが増加したことによる影響、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により商談機械の減少や商談の長期化があったこと等により、売上が減少した影響を受けていると考えられる。

ビーイングのカタリスト

同社のカタリストとしては新製品である「Gaia Cloud」の導入数の増加が考えられる。前述の通り、「Gaia Cloud」への移行期においては販売初年度の売上少なくなり、一時的な業績悪化が見込まれるものの、「Gaia Cloud」の導入が増えることによりストック収入が積み上がり、長期安定的な収入が獲得でき、当該収入は導入数増加によって積み上がるため、「Gaia Cloud」の導入による売上が決算に反映されてくると、同社は安定的に成長している企業として注目を集めるようになると考えらえれる。
また、同社のカタリストとしては新型コロナウィルスの感染拡大や東京オリンピック延期等による公共工事への影響が考えられる。「Gaia(ガイア)」シリーズは主として公共工事の入札に参加する建設業者向けの土木工事積算システムとなっており、同システムの導入やクラウド版への移行が増加するか否かについては公共工事の入札に参加する建設業者の業績に依存する部分があると考えられる。公共工事が削減されると建設業者においても同システムを導入またはクラウド版へ移行する余裕がなくなり、同社のシステム導入に影響を与える可能性に留意が必要となるであろう。一方で、公共事業の増加により同システムのニーズが増加する可能性もある。
新型コロナウィルスの感染拡大により持続化給付金等、他の項目に予算が割り当てられたり、東京オリンピックが中止となることにより、公共工事にかかる予算が削減される可能性も考えられるが、現時点においては当該影響が公共工事に与える影響は不透明であるが、公共事業に充てられる財源に影響を与える場合、同社のカタリストとなりうるであろう。