9672 東京都競馬の業績に関して考察してみた

9672 東京都競馬の業績に関して考察してみた

PERAGARU管理人

四半期業績推移随時更新中

(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2022.Q2 2022.06 8,748 3,990 45.61%
FY2022.Q3 2022.09 9,921 4,449 44.84%
FY2022.Q4 2022.12 8,829 2,715 30.75%
FY2023.Q1 2023.03 8,250 2,912 35.3%
(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2017.Q1 2017.03 4,210 815 19.36%
FY2017.Q2 2017.06 5,118 1,569 30.66%
FY2017.Q3 2017.09 6,655 2,367 35.57%
FY2017.Q4 2017.12 5,319 1,282 24.1%
FY2018.Q1 2018.03 4,661 1,030 22.1%
FY2018.Q2 2018.06 5,417 1,795 33.14%
FY2018.Q3 2018.09 7,039 2,534 36%
FY2018.Q4 2018.12 5,643 1,275 22.59%
FY2019.Q1 2019.03 4,989 1,212 24.29%
FY2019.Q2 2019.06 6,061 2,172 35.84%
FY2019.Q3 2019.09 7,558 2,838 37.55%
FY2019.Q4 2019.12 6,228 1,759 28.24%
FY2020.Q1 2020.03 5,581 1,705 30.55%
FY2020.Q2 2020.06 7,527 3,214 42.7%
FY2020.Q3 2020.09 7,917 3,396 42.9%
FY2020.Q4 2020.12 7,764 2,857 36.8%
FY2021.Q1 2021.03 7,096 2,749 38.74%
FY2021.Q2 2021.06 7,879 3,500 44.42%
FY2021.Q3 2021.09 8,548 3,494 40.88%
FY2021.Q4 2021.12 8,277 3,060 36.97%
FY2022.Q1 2022.03 7,952 3,009 37.84%
FY2022.Q2 2022.06 8,748 3,990 45.61%
FY2022.Q3 2022.09 9,921 4,449 44.84%
FY2022.Q4 2022.12 8,829 2,715 30.75%
FY2023.Q1 2023.03 8,250 2,912 35.3%

沿革

1949年12月戦災復興財源確保を目的に東京都が競馬事業を施行する際、円滑な事業運営を図るために東京都競馬株式会社を設立。1950年5月大井競馬場会場。1955年9月東証一部上場。1970年9月子会社として株式会社東京サマーランド設立。1976年8月伊勢崎オートレース場会場。2006年に閉園済みだがセサミプレイス、現在改修中のサマーランドなど遊園地もグループ内で運営するほか、倉庫と流通センターなど物流関連施設も運営する。競馬場、オートレース場の賃貸などを主に行う

株主構成

有価証券報告書によると2021年6月末時点の筆頭株主は、東京都で保有割合27.99%。特別区競馬組合(東京23区が共同で地方競馬事業を行うために設立した組合)が12.87%と、公的資金で大株主の1位、2位が占められている。日本カストディ銀行の信託口が6.28%、9681東京ドームが6.26%で続き、以降は保有割合5%未満で国内信託銀行信託口や証券、海外金融機関が並ぶ。外国人株式保有比率は10 %以上20%未満

取締役会

取締役は11名(社内7名、社外4名)、監査役は4名(社内1名、社外3名)、監査役会設置会社である。社内取締役のうち4名はプロパー、3名は東京都庁出身者とみられる。

代表取締役の経歴

代表取締役社長の中西充氏は1956年9月生まれ。早稲田大学卒業後、1982年東京都庁へ入庁。産業労働局長、総務局長、副知事等を歴任後、2017年10月東京臨海熱供給株式会社の代表取締役に就任。2019年3月から現職を務める

報告セグメント

「公営競技事業」、「遊園地事業」、「倉庫賃貸事業」、「サービス事業」の4報告セグメントに大別される。2021年12月期第3四半期累計期間における売上高23,523百万円の構成は、公営競技事業72.9%、遊園地事業6.5%、倉庫賃貸事業15.4%、サービス事業5.1%だった。また全社費用控除前の営業利益のうち、公営競技事業にて8割弱を計上する一方、遊園地事業は赤字だった。

事業モデル

2021年12月期第3四半期決算説明資料

日本の競馬は、農林水産省の管轄のもと、日本中央競馬会(JRA)が主催する中央競馬と地方自治体が主催する地方競馬との二大体制となっており、同社の営む競馬場事業は特別区競馬組合が主催する地方競馬である。また、地方競馬は、現在全国17か所で開催されており、主催者数は14団体で行われているが、中でも特別区競馬組合が大井競馬場にて主催する東京シティ競馬(TCK)の売上・入場者数は日本一の規模を誇っている。公営競技事業は、上記の東京シティ競馬を主催する大井競馬場のほか、場外馬券場、伊勢崎オートレース場を地方公共団体に賃貸するという事業である。その他、千葉県印西市において、大井競馬に所属する競走馬の育成・調教・休養を目的としたトレーニングセンターである小林牧場も保有している。中でも同事業の柱となっているのは、大井競馬場の賃貸収入で、特別区競馬組合に賃貸することにより得る賃貸収入は同社の売上の27.8%を占めている(2020年12月期)。当該賃貸借契約は、馬券の4.5%が賃借料となる契約となっており、馬券の売上高に応じて賃借料が増減するため、競技場の開催状況が直接同社の売上に影響する仕組みとなっている。また、大井競馬場と浦和競馬場、船橋競馬場、川崎競馬場の4競馬場が共同で運営する南関東4競馬場在宅投票システム(SPAT4)を構築し、利用者が電話・インターネットにて馬券が購入できるサービスを運営している。コロナ禍の影響により、巣ごもり特需としてSPAT4を利用した電話・インターネットでの馬券の売上は順調。

2020年12月期決算説明資料

遊園地事業は東京都あきる野市にある遊園地「東京サマーランド」を保有、運営を株式会社東京サマーランドへ委託し、事業を営んでいる。日本最大級の流れるプールやドーム型の室内プールなど多彩なウォーターアトラクション等があり、夏季には多くの顧客が訪れるテーマパークとなっている。一方で、夏季以外の入場者数は少なく、遊園地事業売上の70%以上は7~9月の第3四半期に計上され、その他のシーズンは閑散期となる。
倉庫賃貸事業では同社が保有する物流倉庫を子会社である東京倉庫株式会社に賃貸し、同子会社が物流大手企業や各テナントに賃貸するとともに運営管理を行っている。
当該物流倉庫は主に、大井競馬場のある勝島やその近隣の平和島に位置する物流倉庫であるが、2019年4月より千葉県習志野市には「習志野茜浜倉庫」の稼働がスタートしている。また、同社の保有する倉庫は、マルチテナント型の勝島第2地区倉庫を除いて1棟貸の倉庫となっているため、同セグメントの利益率は約60%と非常に高い。物流施設については昨今の新型コロナウィルス流行による悪影響はなく、今後も需要が増えていくものと考えられ、同事業においては今後も安定的にストック収入を獲得できると考えられる。
サービス事業では、同社が保有する商業施設やオフィス等を子会社である株式会社東京プロパティーサービスに賃貸し、同子会社がテナントに賃貸するとともに、運営管理を行っている。同子会社は、当該物件の管理のほか、大井競馬場内の飲食店・駐車場の運営、指定席の販売等のサービスも同セグメント事業として行っている。

競合他社

競馬場の施設所有会社として創業し、遊園地「よみうりランド」の運営も行う株式会社よみうりランド(2020年3月期売上高22,238百万円、2021年3月読売新聞グループによるTOBにより上場廃止)などが挙げられる。

連結の範囲

大井競馬場の場内サービス等の「公営競技事業」及び商業施設の賃貸等の「サービス事業」を営む株式会社東京プロパティーズ、「遊園地事業」を営む株式会社東京サマーランド、「倉庫賃貸事業」を営む東京倉庫株式会社、空調設備の設計・施工管理等の「サービス事業」を営む株式会社タックの4社を連結子会社としている。

強み・弱み

賃貸収入による安定したストック収益などが強み。一方で、赤字が恒常化し、またコロナ禍では開園日数が減った東京サマーランドの経営立て直し老朽化施設への対応が課題。

KPI

①大井競馬、伊勢崎オートレース開催状況

2020年12月期決算説明資料

②SPAT4会員数、指定金融機関数:2020年末約80万人、12金融機関
③投資額:2021-2025年12月期に500億円を計画

業績

連続増収を継続しており、2020年12月期の売上高28,789百万円は5期前から約10,000百万円の増収となっている。賃貸収入における安定した賃貸収入に加え、SPAT4を利用した売上が増加したことによるものと考えられる。営業利益率も上昇傾向で、2020年12月期は38.8%。新倉庫稼働開始により利益率の高い倉庫賃貸事業の売上が増加したことが要因のひとつとみられる。フリーCFは倉庫を取得した2019年12月期など、マイナスとなる期もあるが、マイナス幅は僅か。自己資本比率は近年70%前後で、2020年12月期は71.7%

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