9672 東京都競馬の業績に関して考察してみた

PERAGARU管理人

東京都競馬の事業概要

同社は1949年に、戦災復興財源確保を目的として東京都が競馬事業を行う中で、競馬事業の円滑な運営を図るため、競馬場施設の建設と完成後の保守・整備拡充等を目的として設立された。設立の経緯からも推察できるが、同社の株式を東京都が約28%、特別区競馬組合(東京23区が共同で地方競馬事業を行うために設立した組合)が約13%保有しており、公的資金で大株主の1位、2位が占められている。
同社の報告セグメントは「公営競技事業」、「遊園地事業」、「倉庫賃貸事業」、「サービス事業」の4セグメントに区分されているが、同社の社名の通り競馬施設事業を含む「公営競技事業」が売上高の約60%を占めており同社の中核事業といえる。
子会社については大井競馬場の場内サービス等の「公営競技事業」及び商業施設の賃貸等の「サービス事業」を営む株式会社東京プロパティーズ、東京都あきる野市にて「遊園地事業」を営む株式会社東京サマーランド、「倉庫賃貸事業」を営む東京倉庫株式会社、空調設備の設計・施工管理等の「サービス事業」を営む株式会社タックの4社を連結子会社としている。

公営競技事業

日本の競馬は、農林水産省の管轄のもと、日本中央競馬会(JRA)が主催する中央競馬と地方自治体が主催する地方競馬との二大体制となっており、同社の営む競馬場事業は特別区競馬組合が主催する地方競馬である。また、地方競馬は、現在全国17か所で開催されており、主催者数は14団体で行われているが、中でも特別区競馬組合が大井競馬場にて主催する東京シティ競馬(TCK)の売上・入場者数は日本一の規模を誇っている。なお、同事業において同業となる上場企業は船橋、川崎競馬場の土地及び施設を保有している株式会社よみうりランド<9671>が挙げられる。
同社における公共事競技事業は、上記の東京シティ競馬を主催する大井競馬場のほか、場外馬券場、伊勢崎オートレース場を地方公共団体に賃貸するというきわめて公共性の高い事業である。その他、千葉県印西市において、大井競馬に所属する競走馬の育成・調教・休養を目的としたトレーニングセンターである小林牧場も保有している。
中でも同社の公営競技事業の柱となっているのは、大井競馬場の賃貸収入である。同社は大井競馬場を保有しており、大井競馬の主催を行っている特別区競馬組合に賃貸することにより賃貸収入を得ている。当該特別区競馬組合からの賃料収入は同社の売上の約26%を占めている。当該賃貸借契約は、馬券の4.5%が賃借料となる契約となっており、馬券の売上高に応じて賃借料が増減するため、競技場の開催状況が直接同社の売上に影響する仕組みとなっている。
大井競馬場においては、「アミューズメントパーク大井」というコンセプトを掲げ、2018年からは大井競馬場を舞台とした、関東最大級かつ競馬場としては世界初の大規模イルミネーションイベントである「TOKYO MEGA ILLUMINATION」を開催することで来場者数の増加を図っている。また、同社は大井競馬場と浦和競馬場、船橋競馬場、川崎競馬場の4競馬場が共同で運営する南関東4競馬場在宅投票システム(SPAT4)を構築し、利用者が電話・インターネットにて馬券が購入できるサービスを運営してしている。地方競馬場においては、2月下旬以降新型コロナウィルスの感染拡大により無観客競馬が続いていることから場外馬券場等の売上が低下した一方で、巣ごもり特需として同システムによる売上が想定を超えて推移したことにより2020年12月期第1四半期(2020年3月期)において同事業の売上は前年同期比で増加している。2020年7月現在において、無観客競馬が続いていることから2020年12月期第2四半期(2020年6月期)以降の決算でも場外馬券場等の売上は低下すると考えられるが、4月以降もSPAT4を利用した馬券の売上が順調に推移すれば、当該売上低下はカバーできると期待できる。

遊園地事業

同社は、1970年に株式会社サマーランドを設立し、翌年に東京都あきる野市にある遊園地「サマーランド」を保有、運営する株式会社東京サーキットを吸収合併した。また同年に、運営を株式会社東京サマーランドへ委託し、同社グループにおいては以降遊園地事業を営んでいる。同社は、もともと事業の多角化策として遊園地事業進出を検討していたところで、過大投資により資金繰りが悪化した株式会社東京サーキットからサマーランドを救済する形になったのが遊園地事業の始まりの経緯のようである。
「サマーランド」は、同社が取得後「東京サマーランド」として運営されており、遊約130万㎡の敷地面積を擁しており、日本最大級の流れるプールやドーム型の室内プールなど多彩なウォーターアトラクション等があり、夏季には多くの顧客が訪れるテーマパークとなっている。一方で、夏季以外の入場者数は少なく、遊園地事業売上の70%以上は7~9月の第3四半期に計上され、その他のシーズンは閑散としており耐え忍ぶシーズンとなる。そのため、同事業は従来より継続して赤字が計上されている状態であり、日本でウォーターパークという事業形態を営む難しさを物語っている。
近年では、ドッグランやスポーツフィッシングなどを備えた「わんダフルネイチャーヴィレッジ」をオープンして、年間を通じた集客に努めているものの、直近では同事業においては黒字化に至っていない。
同事業の同業となる上場会社としては、福島県において「スパリゾートハワイアンズ」を運営する常磐興産株式会社<9675>や、「スパ ラクーア」を運営する株式会社東京ドーム<9681>が挙げられる。なお、株式会社東京ドームについては、取引関係の維持・強化のため株式の持ち合いを行っている。

倉庫賃貸事業

同社は倉庫賃貸事業として、同社が保有する物流倉庫を子会社である東京倉庫株式会社に賃貸し、同子会社が物流大手企業や各テナントに賃貸するとともに運営管理を行っている。
当該物流倉庫は主に、大井競馬場のある勝島やその近隣の平和島に位置する物流倉庫であるが、2019年4月より千葉県習志野市には「習志野茜浜倉庫」の稼働がスタートしている。
中でも、勝島にある物流倉庫については、首都高速「勝島IC」至近にあり、羽田空港へのアクセスにも優れているなど非常に利便性に富んだロケーションに位置しているため、物流施設としての価値は非常に高い。
また、同社の保有する倉庫は、マルチテナント型の勝島第2地区倉庫を除いて1棟貸の倉庫となっているため、同セグメントの利益率は60%と非常に高い。同社の保有する賃貸等不動産の帳簿価格は、後述のサービス事業における物件と併せて2019年12月時点で34,261千円であるが、同時点における時価は78,629千円となっており、同社の保有する賃貸等不動産には多くの含み益がある点においても、同セグメントの収益性につながっている。
一般的に物流施設については昨今の新型コロナウィルス流行による悪影響はなく、今後も需要が増えていくものと考えられ、同事業においては今後も安定的にストック収入を獲得できると考えられる。

サービス事業

同社はサービス事業として、同社が保有する商業施設やオフィス等を子会社である株式会社東京プロパティーサービスに賃貸し、同子会社がテナントに賃貸するとともに、運営管理を行っている。同子会社は、当該物件の管理のほか、大井競馬場内の飲食店・駐車場の運営、指定席の販売等のサービスも同セグメント事業として行っている。
同セグメントで運営する主な物件は、商業施設として大井競馬場前のショッピングモール「ウィラ大井」やオフィスビルとしては「ウィラ大井」が挙げられ、その他同子会社においては、トランクルームや賃貸マンションの運営管理も行っている。同事業においても、倉庫賃貸事業と同様に、保有する物件から安定的なストック収入を獲得できている。

東京都競馬の財務状況と経営指標

財務状況を見ると2020年12月期第1四半期(2020年3月期)においては総資産は前期末比較で982百万円減少の92,961百万円となった。総資産の主な減少要因としては、SPAT4リニューアル等により無形固定資産が894百万円増加した一方、減価償却の進捗による固定資産の減少786百万円、営業債権の減少648百万円等の減少が主な要因である。
経営指標を見ると、経営の安全性を示す自己資本比率は前期末70.8%から当四半期末71.7%と前期と比べ改善している。これは、928百万円の四半期純利益を計上したことによるものである。有利子負債は17,812百万円であり、有利子負債比率は26.7%と低く、財務状況は健全であると言える。
また、収益性については売上高は前年同四半期から592百万円増の5,599百万円、営業利益は前年同四半期から492百万円増の1,705百万円、営業利益率は前期24.30%から30.55%に上昇している。これは主に、公営競技事業においてSPAT4を利用した売上が増加したことによる影響と、「習志野茜浜倉庫」が2019年4月稼働を開始したことにより利益率の高い倉庫賃貸事業の売上が増加したことが要因であると考えられる。同社の営業利益率は高く、売上及び利益も増加近年傾向であることから収益性も高いと考えられる。

東京都競馬のカタリスト

東京都競馬のカタリストとしては、日本におけるIR(統合リゾート)事業の進捗が考えられる。同社が保有する土地がカジノ特区の建設候補地と考えられたことから、従来カジノ銘柄としてとらえられていた。現在では、東京における候補地は別の場所となっており前述ような思惑はなくなった考えられるが、競馬はギャンブルとしてカジノとは密接な関係にあり、IR事業の進捗に伴いIR事業の内容が固まってきた際には、内容によっては同社が改めて注目される可能性は否定できない。
また、昨今の新型コロナウィルス感染拡大の影響は今後も続くことが予想されるが、前述の通り巣ごもり特需としてSPAT4を利用した電話・インターネットでの馬券の売上は順調であり、今後も売上増加が期待できる。これをきっかけとして、新型コロナウィルス感染拡大の収束以降もSPAT4の利用が更に世の中に浸透していくこととなれば、同社の売上増加に繋がることとなるであろう。従って、SPAT4の利用拡大が同社のカタリストとなると考えられる。