6240 ヤマシンフィルタの業績について考察してみた

6240 ヤマシンフィルタの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

四半期業績推移随時更新中

(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2024.Q3 2023.12 4,598 518 11.27%
FY2024.Q4 2024.03 4,717 473 10.03%
FY2025.Q1 2024.06 4,817 599 12.44%
FY2025.Q2 2024.09 5,091 777 15.26%
(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2017.Q4 2017.03 2,804 250 8.92%
FY2018.Q1 2017.06 3,072 512 16.67%
FY2018.Q2 2017.09 3,167 455 14.37%
FY2018.Q3 2017.12 3,386 554 16.36%
FY2018.Q4 2018.03 3,543 389 10.98%
FY2019.Q1 2018.06 3,492 521 14.92%
FY2019.Q2 2018.09 3,635 564 15.52%
FY2019.Q3 2018.12 3,462 512 14.79%
FY2019.Q4 2019.03 3,222 366 11.36%
FY2020.Q1 2019.06 2,740 117 4.27%
FY2020.Q2 2019.09 3,071 271 8.82%
FY2020.Q3 2019.12 3,375 212 6.28%
FY2020.Q4 2020.03 3,488 177 5.07%
FY2021.Q1 2020.06 2,858 -98 -3.43%
FY2021.Q2 2020.09 3,705 48 1.3%
FY2021.Q3 2020.12 3,831 -96 -2.51%
FY2021.Q4 2021.03 4,193 1 0.02%
FY2022.Q1 2021.06 4,685 341 7.28%
FY2022.Q2 2021.09 4,871 546 11.21%
FY2022.Q3 2021.12 4,632 226 4.88%
FY2022.Q4 2022.03 4,633 231 4.99%
FY2023.Q1 2022.06 4,169 94 2.25%
FY2023.Q2 2022.09 4,954 427 8.62%
FY2023.Q3 2022.12 4,995 546 10.93%
FY2023.Q4 2023.03 4,487 168 3.74%
FY2024.Q1 2023.06 4,302 112 2.6%
FY2024.Q2 2023.09 4,407 308 6.99%
FY2024.Q3 2023.12 4,598 518 11.27%
FY2024.Q4 2024.03 4,717 473 10.03%
FY2025.Q1 2024.06 4,817 599 12.44%
FY2025.Q2 2024.09 5,091 777 15.26%

沿革

1956年4月フィルタの製造販売会社として東京都に山信工業株式会社が設立された。1966年9月本社工場を開設、需要拡大に合わせ1972年10月に第二工場、さらに1975年5月に佐賀工場を開設した。1989年4月フィリピンに生産拠点を設立。1995年7月アメリカに現地法人を設立して以降、販路拡大のため欧州、東南アジア、中国へも積極展開。2005年10月ヤマシンフィルタ株式会社へ商号変更。2014年10月東証二部へ上場、2016年3月東証一部へ変更。業界で初めてガラス繊維でろ材を自社開発した技術を有し、世界トップシェアの建設機械用フィルタ及びエアフィルタ製品と中心に開発、製造、販売を行う

株主構成

有価証券報告書によると2020年9月末時点の筆頭株主は、創業家の資産管理会社とみられる株式会社やまびこホールディングスで保有割合34.74%、次いで日本カストディ銀行の信託口が6.74%、取締役常務執行役員の山崎裕明氏5.52%、創業家の親族とみられる山崎敬明氏5.51%と続き、以下は保有割合5%未満である。代表取締役社長執行役員の山崎敦彦氏も1.47%保有し、創業家の影響力が大きい。尚、5%ルール報告書によると野村証券と共同保有者の保有比率が12.43%(2020年10月15日付)、米投資ファンドのタイヨウ・ファンド・マネジメントと共同保有者の保有比率が6.14%(2021年3月15日付)、JPモルガンAMの保有比率が5.04%(2021年3月18日受付)であることが報告されている。また、2020年6月30日更新のコーポレート・ガバナンス報告書によると、外国人株式保有比率は10%未満である

取締役会

取締役は7名(社内4名、社外3名)、うち社内1名と社外2名の合計3名が監査等委員。監査等委員会設置会社である。社内取締役は社長及びその長男で常務の山崎裕明氏の2名が創業家で、プロパー1名、野村證券出身1名で構成されている

代表取締役の経歴

代表取締役社長執行役員の山崎敦彦氏は1953年5月生まれ。創業者の子息である。東京大学卒業後、株式会社小松製作所に入社。その後、1982年4月の同社への入社に先駆けて1980年5月取締役へ就任。入社後は取締役経営企画室長、取締役営業部長を歴任し、1990年12月に代表取締役社長へ就任した

報告セグメント

「建機用フィルタ事業」、「エアフィルタ事業」、「ヘルスケア事業」の3報告セグメントに大別される。2021年3月期第3四半期の売上高10,394百万円のうち、建機用フィルタ事業が74.5%を占め、利益もほとんどが同セグメントによるもの。ヘルスケア事業は2020年9月より新設されたセグメントでセグメント損失を計上している。
2021年3月期第二四半期時点の開示によると、売上高の地位別比率は国内が56.6%(建機31.7%、エアフィルタ16.8%、ヘルスケア8.1%)、北米が15.1%、中国が9.5%、アジアが9.5%、欧州9.2%との構成で海外販売比率は43.4%である。

事業モデル

建機用フィルタ事業は建機に使われる油圧フィルタの開発、製造、販売を行っており、世界最大の建機市場である中国系建機メーカーや日米欧に得意販売先を有する。同社のフィルタは建機用だけでなく、工作機械、圧縮機、農業機械等のメーカーで部品として用いられるほか、電子部品や精密部品の製造過程にも用いられる。交換部品についてもメーカーに販売する(エンドユーザーに直接販売しない)ことにより、販売コ ストを節約するとともにメーカーと深い関係を構築。国内顧客向けには同社が、海外向けには各現地法人が販売を担当。国内には神奈川県を中心に研究施設と佐賀にフィルタ生産設備を有し、子会社のアクシーでエアフィルタの生産設備を大阪に、海外子会社のフィリピン拠点にフィルタ生産のメイン工場を有す。
エアフィルタ事業は2019年8月に完全子会社化した株式会社アクシーが製造を行っており、半導体製造工場や病院の手術室、食品工場など異物混入が許されない空間に用いられるフィルタ製品を販売
2017年に独自開発した合成高分子系ナノファイバーの量産化技術を有し、その技術を各事業に応用しつつある。フィルタとしてだけでなく、自動車用途、建材、バッテリーレパレーターやアパレル、再生医療などの幅広い分野への利用が見込める。ヘルスケア事業としてマスク事業に本格参入した他、国内大手アパレルメーカーへ秋冬物衣料のダウンの代わりとなる中綿材として量産供給を開始しており、今後の販売拡大が見込まれる。同技術は産業廃棄物や健康被害リスク低減に貢献するため、ESG及びSDGsの観点からも積極的な提案と販売拡大を図る会社方針である。

競合他社

油圧フィルタのメーカーとして、和興フィルタテクノロジー株式会社(非上場、資本金4億8,000万円)などが挙げられる。

連結の範囲

エアフィルタの製造、販売を行う株式会社アクシーの他、米国、欧州、東南アジアの販売を担う現地法人、フィリピンの製造拠点、中国の研究開発、販売拠点の6社で構成される。

強み・弱み

建機向け油圧フィルタで世界トップシェアを持ち、建機メーカーからの信頼が厚いこと、海外に幅広く販路をもつことが強み。一方で売上高の多くを建機メーカーに依存しているため、景気停滞や公共投資低迷を受け建機メーカーの業績が悪化した場合は、当社の業績にも影響を及ぼす。また日本およびフィリピンに生産拠点を、日本、米国、ベルギー、タイ、中国に販売拠点を持つため、為替変動も業績に影響を及ぼす可能性がある。

KPI

①主要建機メーカー合計生産計画
②建機用フィルタ受注残高
②為替(米ドル、中国元、ユーロ、フィリピンペソなど)
③国内マスク市場規模(フィルタ技術を活かした新規事業、2024年3月期に国内マスク市場の10%、売上高500億円を目標に掲げている)

2021年3月期第3四半期 決算説明資料

業績

業績の底だった2016年3月期から2019年3月期まで3期連続増収増益で、2018年3月期からは過去10年で比較しても水準が切りあがり、売上高が100億円から130億円台に、営業利益の水準は10億円未満から19億円へと拡大したが、2020年3月期はコロナ禍の影響等から建機の需要が減少したことなどを受け、減収減益となった。なお、2021年3月期は増収ながら利益は大幅減少でわずかな黒字の確保に留まる会社計画。航空運賃の上昇や2019年3月期からの積極的な設備投資を足元でも継続しており償却費の負担増加が当面続くことが見込まれる。利益の蓄積により、自己資本比率は60%台から80%台へ高まっていた。投資CFは子会社や投資有価証券、工場用土地の取得などにより変動が大きく、フリーCFは安定していない。

関連ありそうな記事