5302 日本カーボンの業績について考察してみた

5302 日本カーボンの業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

四半期業績推移随時更新中

(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2023.Q4 2023.12 11,027 2,275 20.63%
FY2024.Q1 2024.03 8,438 1,621 19.21%
FY2024.Q2 2024.06 10,362 1,772 17.1%
FY2024.Q3 2024.09 8,623 1,348 15.63%
(単位:百万円) 決算期 売上 営業利益 営業利益率
FY2017.Q1 2017.03 5,727 -61 -1.07%
FY2017.Q2 2017.06 6,245 528 8.45%
FY2017.Q3 2017.09 7,379 906 12.28%
FY2017.Q4 2017.12 8,613 1,196 13.89%
FY2018.Q1 2018.03 8,489 1,897 22.35%
FY2018.Q2 2018.06 11,315 3,695 32.66%
FY2018.Q3 2018.09 13,229 4,693 35.48%
FY2018.Q4 2018.12 14,984 6,119 40.84%
FY2019.Q1 2019.03 12,103 5,095 42.1%
FY2019.Q2 2019.06 11,814 3,790 32.08%
FY2019.Q3 2019.09 9,778 2,962 30.29%
FY2019.Q4 2019.12 11,236 2,980 26.52%
FY2020.Q1 2020.03 6,249 1,120 17.92%
FY2020.Q2 2020.06 7,461 1,128 15.12%
FY2020.Q3 2020.09 5,706 29 0.51%
FY2020.Q4 2020.12 7,386 738 9.99%
FY2021.Q1 2021.03 6,077 415 6.83%
FY2021.Q2 2021.06 8,466 1,009 11.92%
FY2021.Q3 2021.09 7,715 773 10.02%
FY2021.Q4 2021.12 9,320 1,509 16.19%
FY2022.Q1 2022.03 7,812 1,018 13.03%
FY2022.Q2 2022.06 10,564 1,846 17.47%
FY2022.Q3 2022.09 8,307 1,468 17.67%
FY2022.Q4 2022.12 9,116 459 5.04%
FY2023.Q1 2023.03 7,695 1,252 16.27%
FY2023.Q2 2023.06 10,401 1,919 18.45%
FY2023.Q3 2023.09 8,744 1,127 12.89%
FY2023.Q4 2023.12 11,027 2,275 20.63%
FY2024.Q1 2024.03 8,438 1,621 19.21%
FY2024.Q2 2024.06 10,362 1,772 17.1%
FY2024.Q3 2024.09 8,623 1,348 15.63%

沿革

1915年に日本カーボン株式会社として横浜市に設立され、天然黒鉛電極の製造を開始。1927年に国内初の人造黒鉛電極の製造に成功。1949年東証に上場、現在は東証一部。1995年にはハイニカロン(超耐熱性炭化けい素連続繊維)の工業化に成功。電炉向け黒鉛電極、炭素繊維、自動車向けリチウムイオン電池負極材を製造・販売

株主構成

有価証券報告書によると2020年6月末時点の筆頭株主は株式会社みずほ銀行で4.9%を保有。住友商事1.9%、日本カーボン共栄持株会1.1%の他は国内の信託銀行等の信託口、生保、銀行と金融機関が大株主に名を連ね、安定株主は少ない。外国人株式保有比率は10%以上20%未満。

取締役会

取締役は4名(社内2名、社外2名)、監査役3名 (社内1名、社外2名)、監査役会設置会社である。社外取締役は弁護士と株式会社アルバック取締役経験者の2名。

代表取締役の経歴

代表取締役会長の本橋義時氏は1948年5月生まれ。1972年4月に同社へ入社後、2009年3月に取締役、2011年1月に常務取締役、2014年2月に代表取締役副社長を経て、2017年1月に現職へ就任
代表取締役社長の宮下尚史氏は1964年2月生まれ。明治大学商学部卒業。1992年6月に同社へ入社後、2012年3月に取締役、2015年1月に常務取締役、2016年1月に専務取締役を経て、2017年1月に現職へ就任

報告セグメント

同社事業は、「炭素製品関連」と「炭化けい素製品関連」、「その他」の3報告セグメントに大別される。2020年12月期の売上高26,802百万円の構成比は、炭素製品関連が23,628百万円で92.3%、炭化けい素製品関連が2,211百万円で3.6%、その他が963百万円で3.9%を占める。

事業モデル

「炭素製品関連」は黒鉛電極炭素繊維(ファインカーボン)、リチウムイオン電池負極材を製造・販売している。売上高の約50%を占める人造黒鉛電極は、ほぼ全量を電炉鋼業界向けに販売。炭素繊維は半導体製造用、太陽電池製造用、工業炉用等を揃える。リチウムイオン二次電池用負極炭素材は民生用、車載用に実績をもつ。
「炭化けい素製品関連」は、米ゼネラルエレクトリック社と仏サフラン社との合弁会社を2012年4月に設立し、航空機エンジン部品用材料のハイニカロンを製造・販売する。1995年に工業化に成功したハイニカロン(炭化けい素製品)は、従来の炭素繊維の3分の1の重量で1.2倍の耐熱性を誇る。高強度も兼ね備えている点が特徴でジェット機のエンジン部分をはじめとする、様々な産業分野での用途拡大が見込める。2019年度の生産工場火災で減少した生産量を、2020年度は補助ラインを稼働することでカバーした。
「その他」は、産業機械製造・修理、駐車場賃貸といった事業を展開。
販売先の業界を取り巻く環境を見ると、電極販売先の鉄鋼産業は国内での鋼材受注が減少していることに加え、アジア経済の減速による需要減少が懸念される。炭素繊維販売先の半導体関連市場は在庫調整局面が続いたものの今後はデータセンター需要の急増による設備投資の回復が見込まれる。自動車向けリチウムイオン電池負極材販売先の自動車産業は生産停滞により販売量も減少している。

競合他社

タイヤ用カーボンブラックで国内首位の5301東海カーボン株式会社(直近決算期売上高201,542百万円)、アルミ製練用電極に強い5304SECカーボン株式会社(同35,136百万円)、等方性黒鉛で世界首位の5310東洋炭素株式会社(同31,226百万円)などが競合として挙げられる。

連結の範囲

連結子会社は9社、持分法適用関連会社は1社と多く、国内で5社、海外で5社である。このうち主要な子会社は炭素製品の製造・販売を行う新日本テクノカーボン株式会社と日本カーボンエンジニアリング株式会社である。また炭化けい素製品の製造販売を行うNGSアドバンストファイバー株式会社は、米ゼネラルエレクトリック社と仏サフラン社との合弁会社で同社が議決権50%を有す。

強み・弱み

幅広い用途の炭素製品を有し、国内初の人造黒鉛電極の工業化を成功したことで、炭素製品のパイオニアとして存在感を示している点は強み。同社は海外売上比率が約5割を占めており、その大部分が外貨建取引のため為替変動による業績影響と、新型コロナウイルス感染の拡大に伴う景気低迷から海外売上高減少影響を大きく受けることは懸念点。

KPI

中期経営方針「INNOVATION PLAN 2021」で事業ポートフォリオ改革と事業基盤強化を掲げる。複数項目には、「リチウムイオン電池負極材の主力事業化」、「炭化けい素製品関連事業の旺盛な需要への対応」、「人材確保及び育成」が含まれ、電気自動車の普及状況炭化けい素製品関連事業の売上高従業員数の動向がKPIとなり得る。
電気自動車の販売台数の推移や各国のガソリン車規制状況
炭化けい素製品関連事業の売上高 2020年12月期 2,211百万円(前期比▲8.4%)
③連結従業員数の推移 2018年12月期 679名(前期比+65) 2019年12月期664名(▲15)

業績

鋼材市況の需給や在庫調整の影響を大きく受けるため、経営状況は過去10年で見ても変動が大きく安定しない。直近5年間では、2016年12月期に売上高229億円、経常損失5.7億円で底入れし、2018~19年にかけては中国向けを中心に黒鉛電極の特需があり売上高は400億円台、経常利益も150億円程度まで回復。その後の在庫調整により2020年12月期は売上高268億円、経常利益35億円まで減少。営業CFは安定してプラス、投資CFは直近4期でマイナス幅拡大、財務CFは2016年12月期を除いて恒常的にマイナスである。自己資本比率は変動があるが概ね50~60%で推移

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