イフジ産業の最新決算動向と今後の見通し
売上・利益の動向と業績ポイント
最新決算(2025年3月期第3四半期累計:2024年4~12月)では、イフジ産業の売上高は183億94百万円(前年同期比5.7%減)と減収となりましたが、営業利益は24億88百万円、経常利益は24億34百万円といずれも前年同期比約45%の大幅増益、最終利益も16億52百万円(前年同期比12.5%増)と、いずれも増益を確保しています。
減収増益の背景には、以下の要因が挙げられます:
- 液卵関連事業の原料である鶏卵の仕入価格低下による収益性改善
- 鶏卵相場の下落による販売単価低下を、販売数量の増加で補完
特に直近の第3四半期(2024年10~12月)では、経常利益が前年同期比2.1倍(9億円)に急増し、売上営業利益率も6.6%→11.8%へと大幅改善しています。
業績予想と今後の見通し
- 売上高:246億51百万円(前期比+0.6%)
- 経常利益:25億62百万円(+41.6%)
- 最終利益:17億22百万円(+7.8%)
なお、期間累計では過去最高益を更新し、経常利益は計画の95%に達しているほか、通期で営業利益率が10%超を予想しています。一方、第4四半期(2025年1~3月)は、鶏卵の原料高騰が影響し、経常利益が前年並み(前年比▲1.5%程度)にとどまるとの試算もあります。
鳥インフルエンザ症例数の推移(2024~2025年2月)
日本国内の高病原性鳥インフルエンザの発生状況は、以下のように推移しています。
- 2024年10月:北海道などで初発生(数件)
- 2024年11月:本州各地へ拡大し、発生件数が二桁に増加
- 2024年12月:西日本を中心に更なる拡大
- 2025年1月:南西地域を含め、累計26件に到達
- 2025年2月:月初から追加発生が報告され、累計件数がさらに増加中
昨シーズン(2023~2024年)は家禽農場での発生件数がわずか11件であったのに対し、現シーズンは急速な拡大が確認され、約404万羽の殺処分対象となっています。感染拡大のペースは近年でも異例の速さです。
卵価格への影響と今後の価格見通し
鳥インフルエンザによる採卵鶏の大量殺処分は、卵の供給不足を招き、卵価格の高騰を引き起こしています。過去の動向と今後の見通しは以下の通りです。
- 2023年前半:飼料高や過去の鳥インフルエンザ流行により、卵価が記録的水準に達する
- 2023年春~夏:卵価は低下・安定し、2024年夏場までは比較的落ち着いた価格推移(例:2024年5~6月は前年より約50円安)
- 2024年秋以降:再び上昇基調に転じ、11月には前年同月比▲15円程度まで迫る水準(約216円)
- 2025年2月:福岡地区のMサイズ卵は1kgあたり約290円、東京地区は1kgあたり315円に上昇し、過去最高値に迫る状況
業界内では、鶏の再育成に時間を要するため、高値傾向は夏頃まで続くとの見方が示されていますが、夏以降は需要や産卵鶏の増加により、卵価が徐々に平常水準に戻る可能性も指摘されています。
卵価格高騰がイフジ産業業績に与える影響
卵価格の変動は、液卵メーカーであるイフジ産業の業績に直接影響を及ぼします。具体的には、以下の点が注目されます。
- 原料卵価格低下局面(2024年上期): 減収ながらも、原料安のメリットでH1営業利益率が13%超を実現
- 原料価格高騰局面(2023年頃): 売上高は増加するものの、利益率は圧迫される傾向が見られる
- 卵価再騰局面(2024下期~2025年初): 適正在庫の活用や販売価格の調整により、高い利益成長を維持。第3四半期では売上高が前年同期比+15.5%増、営業利益率は二桁(11.8%)に改善
ただし、現在の卵価水準は平常時を大きく上回っているため、原料コスト高が長期化すれば、一時的に利益率が低下するリスクも存在します。一方、卵不足による市場の追い風で、液卵製品の販売単価は上昇し、売上高の増加に寄与する可能性があります。
今後の株価へのインプリケーション
これまでの業績動向や市場環境を総合すると、イフジ産業の業績は非常に好調です。具体的なポイントは以下の通りです。
- 過去最高益の更新見込みと、予想1株配当53円の増配がポジティブ材料となっている
- 短期的には、2025年夏頃までの卵価高止まりと原料高による利益率圧迫リスクが存在
- 供給不足による売上拡大や市場シェア拡大が追い風となる可能性
- 感染拡大の収束に伴い、原料コストが低減すれば利益率が再び改善し、株価に再評価が入る可能性
結論:イフジ産業は現在の卵価高騰局面を巧みに乗り切り、堅調なファンダメンタルズのもと、今期は過去最高益が見込まれるなど、株価の下支え要因が強い状況です。投資家は卵価動向や政府の対策、業績進捗に注目する必要があります。