購買統計データによるやまみ(2820)の業績予測

購買統計データによるやまみ(2820)の業績予測

PERAGARUアナリスト

PERAGARUでは、2023年9月19日より、東芝データ株式会社との提携で「スマートレシート®」から得られる購買統計データの提供を開始する。「スマートレシート®」は東芝グループの電子レシートサービスで約140万人のサービス会員がいる。PERAGARUでは、この購買統計データを個別銘柄ごとに加工・集計し、日次の売上推定値としてデータ提供を予定している。ここでは、データ提供の開始に先立って購買統計データの活用事例を紹介する。

やまみ(2820)は、豆腐およびその関連製品である厚揚げ、油揚げ等の製造・販売を主な事業とする会社である。一部、食品加工業や外食業向けの業務用商品も取り扱っているが、主力は一般消費者向けの商品であり、「スマートレシート®」の購買統計データで一般消費者の購買動向を分析することで業績予測が可能となる。

図1はスマートレシートデータの合計購買金額を示している。購買金額は上昇傾向にあるが、これにはスマートレシートの利用率拡大による上昇分も含まれるため、直接売上推定に使うことはできない。やまみの売上を正しく推定するためには、スマートレシート利用率拡大によるトレンドを除去する必要がある。ここでは、来客者数のデータを補助的に利用することで利用率拡大のトレンドを除去し、実際の売上金額の推定を行った。

図1 スマートレシートにおけるやまみ商品の合計購買金額の推移

図2は、やまみの実際の売上(青)と購買統計データをもとに推定した四半期売上(橙)を比較したものである。売上推定のモデルは、2023年第3四半期までのデータを利用してパラメータを調整し、最新の第4四半期の値は調整済みのモデルから推定した値となっている。モデルが推定した2023年第4四半期の売上は3900百万円程度(前年同期比+15%)であるのに対して、実際の値は4185百万円(前年同期比+24%)となっており、予測を上回る業績であった。直前の2023年第3四半期までのモデルの当てはまりからすると、誤差は大きくなっているものの、実際の値との誤差は7%以下であり、まずまずの精度で予測できているといえるだろう。

図2 やまみの四半期売上予測。青は実績、橙は購買統計データを用いた売上推定値。

直前までの推定値に比べて今回の決算で誤差が大きくなった要因としては、新型コロナウイルスの感染症法分類の5類移行に伴って人流が急激に増加したことが可能性として考えられる。前述のとおり、売上推定モデルでは、トレンド補正のために補助的に来客者数データを使用している。このトレンド補正の効果は、来客者数が多いほど売上推定値が下がる方向に働く。したがって、5月以降の人流増大により来客者数が急増したことで、トレンド補正効果が過剰に働き、実績よりも低い売上推定値を算出したと考えられる。実際、やまみの売上に対してスマートレシートの合計購買金額の占める割合と来客者数の関係を見ても(図3)、5月を含む当四半期(橙)はこれまでの傾向からはやや外れていることがわかる。この他にも、業務用商品の売上の影響や、スマートレシートの利用可能店舗の偏りなどの影響も可能性としては考えられるだろう。

図3 来客者数とスマートレシートの売上カバー率の関係

ここまで見てきたように、PERAGARUで提供されるデータには、来客者数によるトレンド補正の影響が含まれていること、またスマートレシートで取得できている購買データの範囲が限られていること(国内一般消費者向け)に関しては留意する必要があるものの、企業の業績を予測するには有用なデータであるといえる。

※「スマートレシート ®」は東芝テック株式会社の登録商標です。

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