9286 エネクス・インフラ投資法人の業績について考察してみた

9286 エネクス・インフラ投資法人の業績について考察してみた

PERAGARUアナリスト

エネクス・インフラ投資法人の事業概要

同投資法人は、2018年に設立された比較的新しい投資法人であり、インフラファンドとしては6番目に上場した投資法人である。
同投資法人は、伊藤忠系のエネルギー商社である伊藤忠エネクス株式会社<8133>が50.1%、三井住友信託銀行が22.5%、日本政策投資銀行、伊藤忠商事、三井住友信託銀行を主要株主とする投資運用会社である株式会社マーキュリアインベストメント<7190>が22.5%、太陽光発電設備への豊富な投資実績を持つシンガポールのアセットマネジメント会社であるマイオーラ・アセットマネジメント PTE.LTD.が4.9%出資するエネクス・アセットマネジメント株式会社が資産運用会社となり、同投資法人の運営を行っている。前述の4社が同投資法人のスポンサー・グループとなって同投資法人の運営をサポートしている。
インフラファンド市場は、2015年に東京証券取引所が創設した市場であり、再生エネルギー発電設備、公共施設運営権、道路、空港、鉄道等のインフラ資産を投資対象資産とする投資法人の市場である。2016年には戸建分譲販売等の不動産販売事業を営む株式会社タカラレーベン<8897>をスポンサーとして設立されたタカラレーベン・インフラ投資法人<9281>が同市場にインフラファンドとして第1号の上場を果たしており、現在では7投資法人が上場する市場となっている。なお、インフラ資産としては前述の通り様々な投資対象に投資できることとなっているが、上場している7投資法人が保有するインフラ資産は再生エネルギー発電設備のみというのが現状である。
上場インフラファンドとしては、前述のタカラレーベン・インフラ投資法人のほか、不動産ファンドのいちご株式会社<2337>がスポンサーのいちごグリーンインフラ投資法人<9282>、外資系上場インフラファンドのカナディアン・ソーラー・インフラ投資法人<9284>、総合商社である丸紅株式会社<8002>系のジャパン・インフラファンド投資法人<9287>、日本再生可能エネルギーインフラ投資法人<9283>、東京インフラ・エネルギー投資法人<9285>がある。

エネクス・インフラ投資法人の仕組み

同投資法人は東京証券取引所インフラ市場へ上場するインフラファンドであり、同投資法人の行う事業は再生可能エネルギー発電設備等の賃貸事業の単一セグメントとなっている。
同投資法人は、前述したエネクス・アセットマネジメント株式会社と資産運用委託契約を締結しており、同投資法人の物件の運用方針等資産運用の一任している。つまり、同投資法人の物件の取得や売却等の意思決定はエネクス・アセットマネジメント株式会社でされていることとなる。
また、同投資法人は伊藤忠エネクス株式会社<8133>、三井住友信託銀行、マーキュリアインベストメント<7190>、マイオーラ・アセットマネジメント PTE.LTD.(以下、マイオーラ)とそれぞれスポンサーサポート契約を締結している。これらにより、エネクスグループ及びマイオーラが開発又は保有する物件等がパイプライン物件となっており、実際にこれまで同投資法人の取得した物件もエネクスグループが開発した物件や、マイオーラがソーシングし、エネクスグループが保有していた物件となっている。また、パイプライン物件を優先的に取得することができることとなっていることから、当該スポンサーのサポートを受けることにより同投資法人は外部成長していくこととなる。
その他、物件の取得に際しスポンサーにおいて一時的に保有してもらうウェアハウジングをスポンサーに依頼することができたり、SPCを用いた賃貸借スキーム組成に関する支援、オペレーター及びO&M業者等業者選定に関する支援、固定価格買取期間終了後の電力売却支援等の支援をスポンサーから受けることができることとなっている。

エネクス・インフラ投資法人の保有物件

同投資法人においては2020年11月末時点で6物件の太陽光発電所を保有しており、取得価格合計が185.1億円となっており、2020年12月2日付で三重県松坂市の松坂太陽光発電所(402.4億円)を取得し現在では7物件となっている。当該物件の追加取得により、同投資法人の資産規模は大幅に増加しており、上場インフラファンド中で第一位の資産規模へと成長している。執筆日現在である2021年1月下旬の時価総額についても、カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人<9284>とほぼ僅差ではあるが、上場インフラファンド中で第一位となっている。
同投資法人の保有する物件については、長期かつ基本賃料と実績連動賃料を組合わせた賃料形態の賃貸借契約を発電事業者SPC(賃借人)と締結することで、売電収入をそのまま収受するのではなく賃料として収受するスキームとなっており、賃料の大部分は基本賃料が占めることとなっているため、発電量の増減にかかわらず安定した賃料収入を得られるようになっている。なお、発電事業者SPC(賃借人)においては1億円の賃料等積立金口座への積立や、当該積立金を活用しても基本賃料の支払いに不足が生じる場合には、発電事業者SPC(賃借人)の匿名組合出資者に、1億円を限度として追加出資を求める保証スキームを備えており、不測の事態における賃料不払いリスクを軽減している。
オフィスや住宅、ホテル、商業施設等の物件については、外部環境の変化により賃料の増減や空室率の増減に影響を与えるため収益にボラティリティが発生するが、太陽光発電所においては1年の日照時間は多少変動はあるものの毎年大きな増減はなく、長期の賃貸借契約が締結すること、賃料不払いリスクを軽減するスキームを活用していることから他のアセットタイプと比較して安定的な利益獲得が見込まれるものと考えられる。

インフラファンドの特徴

インフラファンドを理解するにあたって、固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)について理解する必要がある。
固定価格買取制度とは再生可能エネルギーの普及を目的として導入された助成制度であり、日本では2012年に制定された再生可能エネルギーで発電した電気を一定期間中同じ価格で買い取ることを国が保証した制度である。
事業規模における太陽光発電の電気買取価格は2012年で40円+税/kWh、2013年で36円+税/kWh、2014年で32円+税/kWh、2015年で29円+税(7月から27円+税)/kWh、2016年で24円+税/kWh、2017年で21円+税/kWh(2017年以降においては、一定の売電量を超えると買取価格は入札制度により決定)、2018年で18円+税/kWh、2019年で14円+税/kWh、2020年で14円+税/kWhと年々減少傾向にあり、現在では導入時の3分の1程度の価格となってしまっている。
しかし、当該買取価格は認定時点で決定され、20年間は同じ価格で買取ってもらえることとなっており、同投資法人の保有する物件のうち、3件が40円+税/kWh、3件が36円+税/kWhとなっており、2020年12月に取得した松坂太陽光発電所においては32円+税/kWhとなっている。今後取得予定のパイプライン物件についても太陽光に関しては32円~40円+税/kWhの太陽光発電所となっている。
ここで問題となってくるのが、固定価格買取期間である20年を経過した後のことについてである。固定価格買取による買取価格は一般的な買取価格よりかなり高く設定されているため、期間が満了した太陽光発電所の収益性は大幅に低下することが見込まれる。特に40円等の高い価格で売電している太陽光発電所についてはその影響も顕著に表れるものと考えられる。インフラファンド市場も比較的新しい市場であり、このような固定価格買取期間である20年を経過した後のことについては実績がなく、現時点でどのようになっていくかは不明である。
なお、同投資法人で一番最初に固定価格買取期間が満了するのは大分県にあるJEN玖珠太陽光発電所であり、2033年9月に調達期間が満了し、その後順次ほかの太陽光発電所においても調達期間が満了していくことなるため、約10年後くらいには固定価格買取期間の満了が意識されることになるであろう。

エネクス・インフラ投資法人の特徴

同投資法人の特徴としては、スポンサーである伊藤忠エネクスから、スポンサー・サポート契約に基づき、エネクスグループが開発する風力発電設備等及び水力発電設備等に関する優先的売買交渉権の取得を予定している点である。前述の通り、上場している7投資法人が保有するインフラ資産は再生エネルギー発電設備のみであり、風力発電設備等及び水力発電設備等を取得した際には、上場インフラ投資法人初の試みとなり、注目される可能性が期待できる。
エネクスグループが開発する風力発電設備等及び水力発電設備等については、既に稼働が開始している施設もあり、太陽光発電設備等と合わせて1,000億円規模まで成長できるパイプラインが既にあるとのことである。このようなパイプラインがすでに整っている点が同社の強みと考えられる。
また、同投資法人においては、スポンサーサポート契約の中で、エネクスグループから固定価格買取期間終了後の電力売却支援等の支援を得られることとなっている点も、同投資法人の強みであるといえる。

エネクス・インフラ投資法人の財務状況と経営指標

同投資法人の直近決算である2020年11月期の財務状況を見ると、総資産は対直前決算期である2019年11月比で625千円減の11,050百万円となっており、2020年1月17日に長崎琴海太陽光発電所の取得したことにより機械及び装置の増加等により有形固定資産が63百万円増加しているが、未収消費税が1,219百万円減少したことが主な要因である。
純資産は329百万円減少の8,090百万円となっており、主な増減要因は219百万円の当期純利益を計上した一方、298百万円の剰余金の配当を行ったこと、250百万円の利益超過分配を行ったことによるものである。
自己資本比率は対直前決算期0.4ポイント下がって42.3%となっている。また。有利子負債については758百万円減少の10,407百万円となっており、総資産有利子負債比率が1.2ポイント下がって54.4%となっており、概ね横ばいである。
収益性については、対直前決算期比で営業収益は313百万円増加の1,570百万円となった一方、営業利益は110百万円減少の316百万円、当期純利益は89百万円減少の221百万円といずれも減少している。利益が減少した主な要因としては、物件取得した年には費用計上されず、前期は計上されていなかった公租公課が177百万円が当期に計上されていることによるものであると考えられる。
1口当たり分配金については、利益超過分分配金を除くと857円減の2,393円となっているが、利益超過分配を含む1口当たり分配金は20円増の6,000円となっている。

エネクス・インフラ投資法人の利益超過分配金について

利益超過分配金とは、投資法人が計上した利益以上の分配金を分配するものであり、出資の返還の意味合いを持つ分配金である。従って、理論的には利益超過分配金の支払いを続けるとその分の株価は下落していくこととなる。
同投資法人が規約に定める分配方針によると、同投資法人が妥当と考えられる現預金を留保したうえで、同投資法人の財政状況に悪影響を与えない範囲で、利益を超えた金銭の分配(出資の払い戻し)を原則として毎期継続的に実施する方針としており、投資主への還元を行っている。
同投資法人においては、減価償却費という現金の流出を伴わない費用が計上されている一方、保有資産は太陽光発電設備であり、通常の物件ではかかるようなリノベーション等の資本的支出が追加で発生する機会があまりないことから、利益計上額以上のキャッシュフローが投資法人内に残る可能性が高い。追加でインフラ資産を取得する際には資金の借入や、新投資口の発行を行うことが多いため、当該余剰キャッシュは投資法人内に留保しておく必要性は低く、利益超過分配金として投資主に還元されることは合理的であると考えられる。

エネクス・インフラ投資法人の分配金利回りについて

他のアセットタイプに投資する投資法人との比較においては分配金利回りが高くなっているが、前述の利益超過分配金があることから分配金利回りを単純に比較することはあまり意味がない。
太陽光発電設備のみに投資を行っているインフラファンドにおいては、同投資法人と同様に余剰キャッシュを利益超過分配金として分配していることから、一定の比較可能性はあると考えられる。執筆時点における分配金利回りとして、タカラレーベン・インフラ投資法人<9281>が5.88%、いちごグリーンインフラ投資法人<9282>が、6.05%、カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人<9284>が5.7%、ジャパン・インフラファンド投資法人<9287>が6.28%、日本再生可能エネルギーインフラ投資法人<9283>が5.98%、東京インフラ・エネルギー投資法人<9285>が6.79%となっており、同投資法人の分配金利回りは6.77%であるため、インフラファンドの中では比較的高い部類であるといえる。
これは、2020年11月に同社が公表した新投資口の発行により投資口価格が大きく下落したことが要因であると考えられる。

エネクス・インフラ投資法人のカタリスト

同投資法人におけるカタリストとしては、風力発電設備等及び水力発電設備等の資産組み入れが考えらえる。同投資法人のパイプライン物件として既に稼働している風力発電設備等及び水力発電設備等があり、当該発電設備は2021年頃には取得することを予定している。
昨今のESG投資(環境(environment)、社会(social)、企業統治(governance)に配慮している企業を重視・選別して行う投資)の増加を追い風に、再生可能エネルギーによる発電設備への投資は伸びているが、インフラファンド初の風力発電設備等及び水力発電設備等の資産組み入れとなれば、同投資法人が注目されるきっかけとなる可能性がある。
一方で、追加の資産取得となると追加で資金が必要となることから2020年12月に行われたような公募増資が改めて行われる可能性に留意すべきである。2020年12月の公募増資の際も投資口価格は10%ほど下落しており、今後も増資による投資口価格の下落の可能性がある点に留意すべきである。なお、2021年以降に取得予定のパイプライン物件の中には前述の風力発電設備等及び水力発電設備等のほかに、比較的大規模な高崎案件もあることから、当該物件の取得の際には増資は避けて通れないものと考えられる。とはいえ、赤字補填の増資や使途の決まっていない増資とは異なり、物件取得のための増資であることから、追加で取得した物件の利回りが既存の物件の利回りを上回れば1口当たり当期純利益の増加も期待できる。また、2020年12月の公募増資の発行価格は1口当たり88,452円であったことを鑑みると、これを下回る価格の際に公募増資を行うとは考えにくく、8万円台後半であれば、増資による物件の追加取得は難しいと思われる。今後投資口価格が上昇してきた際には留意すべきであろう。
二点目として、固定価格買取期間終了後の電力売却体制の確立もカタリストとして考えられる。現状、固定価格買取期間終了後の電力売却方法、収益性については不透明であり、インフラファンド全体の課題とされている。同投資法人においては、スポンサーサポート契約の中で、エネクスグループから固定価格買取期間終了後の電力売却支援等の支援を得られることとなっているが、固定価格買取期間終了後の電力売却体制を整え、収益化できることとなれば同投資法人への投資の魅力が高まる考えられる。

<参考サイト:不動産投資情報ポータル>
http://www.japan-reit.com/

<参考サイト:【9286】エネクス・インフラ投資法人/潜在的な実力値は高いが、外部成長機会は当分先か。>
https://ameblo.jp/mtr-cyberbranch/entry-12586537094.html
<参考サイト:【2020年版】固定価格買取制度とは?わかりやすく解説します!>

【2020年版】固定価格買取制度とは?わかりやすく解説します!