8963 インヴィンシブル投資法人の業績について考察してみた

8963 インヴィンシブル投資法人の業績について考察してみた

PERAGARU管理人

インヴィンシブル投資法人の事業概要

同投資法人は、2002年に東京グロースリート投資法人という商号で設立され、2004年大阪証券取引所、2006年に東京証券取引所の不動産投資信託証券市場に上場された投資法人である。当初は主に住宅に投資を行っていた住宅系REITであった。
その後、2008年に起きたリーマンショックの影響で、不動産マーケット環境が大幅に悪化し、同年にはニューシティ・レジデンス投資法人がJ-REIT初の民事再生法適用を申請するなど、REIT業界においては資金繰りが非常に厳しい状況の中、2020年に有料老人ホームやシニア住宅といった高齢者向けの居住施設を中心に投資していた住宅系REITのエルシーピー投資法人と合併し、インヴィンシブル投資法人へと商号を変更している。なお、同社の資産運用会社は当初は株式会社日本リートの子会社であるグロースリート・アドバイザーズ(旧株式会社東京リート投信)であったが、合併後はエルシーピー投資法人側の運用会社であったコンソナント・インベストメント・マネジメント株式会社(旧エルシーピー・リート・アドバイザーズ)が資産運用会社となっている。
翌年の2011年にはアメリカの投資会社であるフォートレスインベストメントグループLLC(以下、FIG)が子会社のCalliope合同会社(以下、カリオペ)を通じてコンソナント・インベストメント・マネジメント株式会社の100%子会社となり、フォートレスインベストメントグループの傘下に入ることとなった。そのFIGも2017年にはソフトバンクグループ株式会社<9984>が買収したことにより、同投資法人はソフトバンクグループの傘下の投資法人となっている。
同投資法人は、当初住宅を中心に投資を行う住宅REITが合併してできたREITであるが、2014年頃からは将来の賃料アップサイドが期待できるアセットタイプとしてホテル資産を多く取得し注目を集めた。住居・ホテルを中心としつつ、サブアセットとしてオフィスや商業施設にも投資を行うREITとしているが、現在ではオフィスは保有しておらず、商業施設もわずかとなっている。2014年にホテルを取得してからはホテル物件中心に投資しており、2020年6月期末時点で148物件を保有するREITとなっている。

インヴィンシブル投資法人の仕組み

同投資法人は東京証券取引所不動産投資信託証券市場へ上場するJ-REITである。従って、同投資法人の行う事業は不動産賃貸事業の単一セグメントとなっている。
同投資法人は、コンソナント・インベストメント・マネジメント株式会社と資産運用委託契約を締結しており、同投資法人の物件の運用方針等資産運用の一任している。つまり、同投資法人の物件の取得や売却等の意思決定はコンソナント・インベストメント・マネジメント株式会社でされていることとなる。なお、コンソナント・インベストメント・マネジメント株式会社の株式は、先述のソフトバンクグループによるFIG買収に伴い、カリオペが100%保有していたが、ソフトバンクグループの子会社であるFortress CIM Holdings L.Pに80%、ソフトバンクグループに20%譲渡されている。
また、同投資法人はフォートレス・インベストメント・グループ・ジャパン合同会社とスポンサーサポート契約を締結しており、FIG及びその関係が法人が保有、開発又は運用する不動産を売却しようとする場合に、同投資法人の投資基準に適合すると判断する場合、またはスポンサー・グループ以外の第三者から売却情報が提供されたときに、資産運用会社であるコンソナント・インベストメント・マネジメント株式会社に情報開示できるものとされている。また、フォートレス・インベストメント・グループ・ジャパン合同会社はコンソナント・インベストメント・マネジメント株式会社に対してアドバイザリー業務の提供や情報交換を行うものとされている。FIGは2012年にマイステイズホテルを、2013年にシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルを買収しており、同投資法人においてはこのスポンサーサポート契約を活用してFIGから物件の情報の提供を受け、資産の組み入れを行うことで外部成長のためのパイプラインとなっている。
同投資法人のようにホテルをコアアセットとして投資対象としているREITはジャパン・ホテルリート・投資法人<8985>、星野リゾート・リート投資法人<3287>、森トラストグループの森トラスト・ホテルリート投資法人<3478>やいちごグループのいちごホテルリート投資法人<3463>等が挙げられる。なお、時価総額ではジャパン・ホテルリート・投資法人<8985>に次いでホテルをコアアセットとして投資対象とする投資法人においては、同投資法人は2番目の規模となっている。

インヴィンシブル投資法人の保有物件

同投資法人においては2020年6月末時点で148物件を保有しており、取得価格合計が5,116億円となっている。なお、そのうち86物件がホテルであり、取得価格合計が4,506億円で全体の約88%を占めている。次いで60物件が住宅であり、取得価格ベースで554億円で全体の約11%を占め、残りの2物件が商業施設となっている。
また、ホテル86物件のうち、73物件が株式会社マイステイズ・ホテル・マネジメント(以下、MHM)への貸付し、同社の運営するホテルとなっているため、同社の運営状況が同投資法人の業績に与える影響は大きい。また、同投資法人は英領ケイマン諸島にあるリゾートホテル2物件も保有しており、海外のホテルにも投資を行っている。

インヴィンシブル投資法人の保有物件の賃料

同投資法人の業績を予測するにあたって重要となってくるのが各物件の賃料の形態である。ホテルの賃料は変動賃料等によりホテルの運用実績に応じて賃料が決定されるケースが多くあり、外部要因が業績に与える影響は大きいため、昨今の新型コロナウィルスの感染症拡大によりホテルの稼働率が大幅に低下したことを鑑みると、各物件の賃料が固定賃料であるか、変動賃料であるかを確認する必要がある。固定賃料の物件については賃料の不払いがなければ基本的に稼働率低下の影響は同投資法人の業績に影響を与えないこととなるが、同投資法人の保有する国内ホテルにおいては、84物件のうち75物件が変動賃料スキームを採用しており、原則としてホテル収益からホテルオペレーター(テナント)に対してマネジメントフィーを支払い、当該支払額を控除した後の売上高営業利益(GOP)のすべてを収受する仕組みとなっている。そのため、ホテル収益のアップサイドを直接取り込める仕組みとなっている一方、昨今の新型コロナウィルスの感染症拡大による稼働率の低下によるGOP減少の影響を直接被っていることとなる。なお、実際はGOPが0を下回った際も、一部固定賃料として賃料を収受できる契約となっていたが、MHMグループが運営する国内ホテルにかかる定期建物賃貸借兼管理業務委託契約の変更覚書を締結し、固定賃料の支払いを免除していることから、固定賃料部分も収受できておらず、同投資法人の業績は大幅に悪化している。
一方で、住宅については賃料が月額固定となっていることや、一般的に室数も多くオフィスのような大型テナントの退去による稼働率低下等のリスクが少ないことから、稼働率も安定している。そのため、ホテルとは異なり新型コロナウィルスの感染症拡大による影響は小さく、安定的に収益を獲得できていると考えられる。

MHMについて

同投資法人の収益構造を理解するうえで、MHMグループとの契約を理解する必要がある。同投資法人は保有するホテル86物件のうち73物件がMHMグループに賃貸しており、MHMグループがホテルオペレーターとなっているため、MHMグループから支払われる賃料が同投資法人の業績に与える影響は非常に大きい。
MHMは株式会社ウィークリーマンション東京として1999年に設立され、2012年にFIGに買収されたのち2013年に株式会社フレックステイ・ホテルマネジメント、2014年に株式会社マイステイズ・ホテル・マネジメントに商号変更をしている。MHMグループは、宿泊特化型ホテル・フルサービスのシティホテル・リゾートホテル・温泉旅館・1泊から中長期滞在に対応する家具家電付レジデンス型など多彩なブランドを展開しており、北海道から沖縄にいたる日本各地で100棟以上を運営している。ブランドの中でも「ホテルマイステイズ」といった宿泊特化型のホテルが多いが、「ホテルマイステイズプレミア」や「アートホテル」といったフルサービスのホテルも運営している。
また、MHMグループはFIGに買収されており、同投資法人の資産運用会社であるコンソナント・インベストメント・マネジメント株式会社もFIG及びソフトバンクグループの傘下であり、MHMグループが運営する物件の大部分が同投資法人の保有する物件であることから、同投資法人とかなり近い関係にある点、MHMの純資産は2019年12月時点で2,317百万円と同投資法人の物件規模からするとそこまで規模の大きい会社でない点にも留意が必要ある。

MHMグループからの変動賃料及び定期建物賃貸借兼管理業務委託契約と変更覚書について

MHMグループと定期建物賃貸借兼管理業務委託契約において、前述の通り賃料は固定賃料+変動賃料という形式をとっているが、ホテル収益からホテルオペレーター(テナント)に対してマネジメントフィーを支払い、当該支払額を控除した後の売上高営業利益(GOP)のすべてを収受する仕組みとなっている。変動賃料の計算は3か月単位で算出していることから、タイムリーにホテルの業績が同投資法人の決算に反映されるようになっており、昨今の新型コロナウィルスの感染症拡大によるホテル稼働率の低下も2020年6月期においても即時に反映されているものと考えらえられる。
また、2020年6月期の決算悪化の背景に、MHMグループとの定期建物賃貸借兼管理業務委託契約変更覚書締結が影響している点について留意したい。2020年5月11日付で同投資法人がリリースしている「主要テナントとの定期建物賃貸借兼管理業務委託契約変更覚書締結に関するお知らせ」において、MHMグループに対して、①2020年3月1日から同年6月30 日までの期間については、固定賃料(合計約 35 億円)を全額免除し、変動賃料の計算方法を変更すること、②MHMグループが従来負担していた物件の保守点検費用、修繕費等の物件管理費を同投資法人負担とすること、③MHMグループに対して支払う管理手数料をホテル営業を継続するために必要な金額へ金額を引き上げることの3点を公表している。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、MHMグループから賃料の支払免除並びに経費負担の変更その他の条件変更を強く要請されたことにより、MHMグループの経営を支援する目的で行われた契約変更である。同投資法人のホテルの大部分の運営を行っているMHMグループが経営悪化することにより運営が行えなくなってしまうと、同投資法人においても損失が大きいため、仕方がないという一面もあるとは思う。しかし、MHMグループに投資するFIGにおいては支援を行わず、同投資法人において損失を補填し、同投資法人の投資家に損失を被らせる方法については批判も多い。
また、2020年7月から同年9月末日までの賃料については、暫定措置として固定賃料を本来支払うべき38億円から8億円に変更し、変動賃料は毎月物件単位計算していたものを、73物件を一つの単位として、3ヶ月通算で算出する契約変更を行っている。そのため、ホテルの稼働率も多少回復したこともあり2020年6月期と比べ、多少業績は改善するものと見込まれる。
これらの契約変更を踏まえると、MHMグループとの賃貸借契約においては、固定賃料+変動賃料として、最低限固定賃料が受領できるような契約となっているものの、実態としてはMHMグループへの依存度が高く運営会社の変更が容易でないこと、このような契約変更が起きうること鑑みると、ホテルの運営リスクのほとんどを同投資法人が負担し、全額変動賃料の賃貸借契約と大きく変わりがないと考えるべきであろう。

インヴィンシブル投資法人の財務状況と経営指標

同投資法人の直近決算である2020年6月期の財務状況をを見ると、総資産は対直前決算期である2019年12月比で5,768百万円減の513,663百万円となっており、主な増減要因は「ホテルマイステイズプレミア成田」、「アートホテル盛岡」を取得し有形固定資産が16,236百万円増加した一方、「シティハウス東京新橋」を譲渡し4,465百万円、減価償却費の計上により有形固定資産の減少3,999百万円したことにより、有形固定資産が10,402百万円増加しているが、2月から6月にかけて受取賃料が減少したこと、物件管理費、管理手数料の支払いが増加したことに伴い現金及び預金が7,734百万円、4,735百万円がそれぞれ減少したことや、営業未収入金が3,144百万円減少したことが主な要因である。
純資産は10,192百万円減少の249,538百万円となっており、主な増減要因は423,917百万円の当期純利益を計上した一方、10,517百万円の剰余金の配当を行ったことによるものである。
自己資本比率は対直前決算期1.4ポイント下がって48.3%となっている。また。有利子負債については4,294百万円増加の263,468百万円となっており、総資産有利子負債比率が0.3ポイント低下して51.0%となっており、概ね横ばいである。なお、不動産投資においては総資産有利子負債比率はLTV(Loan to Value)と呼ばれ、投資の安定性をあらわす指標として用いられる。直近の決算を見ると、同業種のジャパン・ホテル・リート投資法人<8985>は40.6%、星野リゾート・リート投資法人<3287>は37.9%、森トラスト・ホテルリート投資法人<3478>は49.1%、いちごホテルリート投資法人<3463>においては43.6%となっていることから、同投資法人のLTVは51.0%と比較的高く、他の投資法人との比較ではリスクが高いと考えられる。
収益性については、対直前決算期比で営業収益は9,177百万円減少の9,410百万円、営業利益は11,362百万円減少の1,496百万円、当期純利益は10,093百万円減少の13,168百万円といずれも減少しており、新型コロナウィルスの感染症拡大によるホテル稼働率の低下の影響はもちろんであるが、MHMグループの350百万円の固定賃料の免除や物件管理費や管理手数料の引き上げも業績に影響を与えている。
1口当たり分配金も1,656円減の69円となっており、大幅な減配となっている。

インヴィンシブル投資法人のNAV倍率について

REITにおいて保有する資産は物件であり、各物件には不動産鑑定士等によって算出された鑑定評価額があり、開示されている。そのことから株式の評価と異なり、REITを評価する基準の一つでNAV倍率というものが存在する。NAV倍率とは、投資口の価格が保有不動産の正味の価値に比べて何倍かを表す指標であり、「投資口の時価総額」を「純資産価値(NAV:Net Asset Value)=保有物件の鑑定評価額の合計 - 負債」で除したものがNAV倍率となる。株式の評価の指標においてもPBR(株価純資産倍率)があるが、PBRの計算に用いる純資産は会計上の純資産であり、処分価値が必ずしも反映されていない一方、NAVの計算基礎となる鑑定評価額は処分価値を反映した価格であることから、PBRよりもNAV倍率のほうが投資対象を評価する基準としては信頼性があると考えられる。なお、NAV倍率もPBRと同様、通常1倍を割っていれば割安、1倍を超えると割高と考えられている。
なお、同投資法人のNAVは執筆時点で0.71倍程度となっており割安感があるが、ホテル主体型のREITにおいてはコロナ禍において急激に投資口価格が下落している。他のホテル主体型REITのNAV倍率をみると、ジャパン・ホテルリート・投資法人<8985>が、0.68倍、星野リゾート・リート投資法人<3287>が0.93倍、森トラスト・ホテルリート投資法人<3478>が0.84倍、いちごグループのいちごホテルリート投資法人<3463>が0.53倍となっており、REIT全体で考えると割安となっているものの、ホテル主体型REITの中では特別割安となっているわけではなさそうである。

インヴィンシブル投資法人のカタリスト

同投資法人におけるカタリストとしては、Go To トラベルキャンペーンの延長が考えらえられる。Go To トラベルキャンペーンは新型コロナウィルスによって落ち込んだ消費を回復させるため2020年7月22日から政府が実施しているキャンペーンであり、旅行代金の35%を旅行代金から割引になるキャンペーンである。また、10月からは旅行代金の15%分の地域クーポンがもらえることとなり、実質的に旅行代金の半分が補助される制度であり、旅行業界の景気回復につながっている。このキャンペーンは2021年1月末までで終了する予定であったが、実施時期を2021年5月まで延長する方向で政府で検討されていることが明らかになった。当該キャンペーンが継続されることで、旅行関連の業種の業績への期待が高まるであろう。一方で、コロナウィルスの感染症拡大による第3波の懸念から、Go To トラベルキャンペーンの中止を呼び掛ける声もあるため、当該キャンペーンの中止は同投資法人の業績に悪影響を与えることになると思われる。
そして、次に同投資法人の資金繰りがカタリストとして考えられる。現状の低い水準にある投資口価格を考慮すると、新規で投資口を発行して資金調達することは困難であると考えられる為、返済期限の迎えるローンの借換えがうまくいかない場合は、資金がショートしまう恐れがあるため、同社のローンの借換状況や、資金繰りにも注意が必要となるであろう。
最後に、MHMグループの運営するホテルの稼働回復及びMHMグループの自体業績回復が長期的な目線でのカタリストとなるであろう。前述の通り、同投資法人の保有する物件の大部分がMHMグループの運営するホテルであり、MHMグループのホテルの業績さらには同社の支援を目的とした契約変更を行ったりと、MHMグループ自体の業績自体も同投資法人の業績に影響を与えている。新型コロナウィルスの感染症拡大によりMHMグループも非常に厳しい状況にあるため、このような情況が続き、MHMグループの経営が成り立たなくなっていってしまうと、同投資法人にもその影響は大きく与える。ホテル運営会社の変更も不可能ではないが、これだけの保有物件の運営を行っている運営会社を変更することは容易ではないと考えられる。そのため、MHMグループとは一体として業績を考える必要があるであろう。一方で、MHMグループの運営するホテルの稼働が回復した際には、そのアップサイドは同投資法人で享受でき、NAV倍率も低い水準にあることから、大きく下がった同投資法人の投資口価格も大きく戻す可能性も秘めていると考えられる。