3287 星野リゾート・リートの業績について考察してみた

PERAGARU管理人

星野リゾート・リートの事業概要

同投資法人は、2013年に「星のや」「星野リゾート リゾナーレ」「星野リゾート 界」等各地で高級感ある温泉旅館やリゾートホテルを運営する企業である株式会社星野リゾート(以下、星野リゾート)のグループが立ち上げた投資法人(REIT)である。星野リゾート及びその親会社である株式会社星野リゾートホールディングスは非上場会社であるものの、投資主が投資口の保有を通じて日本の観光産業の分野においてその成長の果実を享受できる仕組みを作ることを目指すとして、本投資法人を設立しており、本投資法人が上場することにより、個人投資家が星野リゾートの運営のするホテルへの投資が可能になった。
なお、星野リゾートは1992年に、物件の所有を本業とせず、運営会社を目指すという企業将来像を発表しており、同投資法人の上場により各投資家が投資口の保有を通した物件の保有することとしたのもその一環である。
同投資法人は日本の伝統的な木造旅館をREITとして初めて組み入れるなど、革新的な取り組みを行っており、上場時は6物件のみを投資対象とする世界最小規模のREITとして上場されたが、2020年4月時点では61物件を保有するに至っている。

星野リゾート・リートの仕組み

同投資法人は東京証券取引所不動産投資信託証券市場へ上場するJ-REITである。従って、同投資法人の行う事業は不動産賃貸事業の単一セグメントとなっている。
同投資法人は、星野リゾートの100%子会社である株式会社星野リゾート・アセットマネジメント(以下、星野リゾートAM)と資産運用委託契約を締結しており、同投資法人の物件の運用方針等資産運用の一任している。つまり、同投資法人の物件の取得や売却等の意思決定は星野リゾートAMでされていることとなる。
また、同投資法人は星野リゾートとスポンサーサポート契約を締結しており、星野リゾートグループが保有するホテル、旅館及び付帯設備のうち同投資法人の投資方針に合致するホテル、旅館及び付帯設備を売却しようとするときは、同投資法人に対して第三者に先立ち優先的に情報を提供し、優先的に交渉する権利が与えられている。同投資法人においてはこのスポンサーサポート契約を活用して星野リゾートグループの再生ノウハウにより魅力を取り戻した物件の情報の提供を受け、資産の組み入れを行うことで外部成長のためのパイプラインとなっている。
同投資法人のようにホテル、旅館等を投資対象としているREITジャパン・ホテルリート・投資法人<8985>、インヴィンシブル投資法人<8963>、森トラストグループの森トラスト・ホテルリート投資法人<3478>やいちごグループのいちごホテルリート投資法人<3463>等が挙げられる。なお時価総額ではジャパン・ホテルリート・投資法人<8985>、インヴィンシブル投資法人<8963>に次いでホテルを投資対象とする投資法人においては、同投資法人は3番目の規模となっている。ホテルや旅館等の賃料は変動賃料等によりホテルの運用実績に応じて賃料が決定されるケースが多くあり、オフィスや住宅等の安定的に賃料を得られる物件を投資対象とするREITと比べると、新型コロナウィルスの感染症拡大等の外部要因が業績に与える影響は大きい。

REITの特徴

同投資法人を理解するうえで、まずはREITの仕組みについて理解する必要がある。REITとは、多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業移設、マンション等の複数の不動産を購入してテナントに貸付け、その賃料収入や売却益を投資家に分配する仕組みであり、日本におけるREITについてはJ-REITと呼ばれている。なお、REITにおいては不動産賃貸業以外の業務を行うことが制限されており、保有する物件の貸付、売却及びそれに付随すること以外の事業を行えないこととなっていることから、REITの事業は非常にシンプルなものとなっている。また、REITにおいては仕組上内部留保せず獲得した収益のほとんどを配当しなければならないこととなっている点で株式会社とは異なっている。株式会社においては当期純利益を計上しても内部留保されて再投資されることから多くの場合で配当性向はそこまで高くないが、REITにおいては当期純利益を計上するとその金額が配当金の金額に直接影響してくることになる。そのため、株式会社においては配当利回りを基準に比較を行っても配当性向が異なることからあまり比較ができないが、REITの比較においては配当利回りが1つの評価ポイントとなってくる。
また、REITにおいては、他の上場会社とは異なり決算短信等で1物件ごとの詳細な情報が開示されているため、物件ごとの取得価格や鑑定価格、面積や利回り等の詳細な情報を分析することができるため、REITへの投資を検討する際は投資法人の保有する物件を一通り見て検討することができる。

星野リゾート・リートの保有物件

同投資法人においては2020年4月末時点で61物件を保有しており、取得価格合計が1,617億円、総客室数は7,537室となっている。なお、61物件のうち星野リゾートグループが運営する物件は「星のや軽井沢」、「星のや京都」等の「ほしのや」4物件、「リゾナーレ八ヶ岳」、「リゾナーレ熱海」の「リゾナーレ」2物件、「界 松本」や「界 出雲」等の「星野リゾート 界」9物件を含む計18物件であり、星野リゾートグループが運営する物件は全体の30%程度であり、すべてが星野リゾートグループが運営する物件というわけではないことに留意したい。
残りの物件は、株式会社SHRロードサイドインが運営する「チサン イン」22物件、、株式会社カンデオ・ホスピタリティ・マネジメントが運営する「カンデオホテルズ」5物件、IHG・ANA・ホテルズグループジャパン合同会社が運営する「ANAクラウンプラザホテル」4物件、株式会社イシン・ホテルズ・グループ及びその子会社が運営する「ザ・ビー」4物件、株式会社グリーンズが運営する「コンフォートホテル」3物件等がある。同投資法人は、長期的に安定したキャッシュ・フローが見込まれる星野リゾート運営物件の構成比率を50%超にすることを目標としており、2020年11月においては星野リゾートの運営する「界 遠州」を取得している。

星野リゾート・リートの保有物件の賃料

同投資法人の業績を予測するにあたって重要となってくるのが各物件の賃料の形態である。昨今の新型コロナウィルスの感染症拡大によりホテル及び旅館の稼働率が大幅に低下したことを鑑みると、各物件の賃料が固定賃料であるか、変動賃料であるかを確認する必要がある。同投資法人においては、「カンデオホテルズ」5物件や、「コンフォートホテル」3物件等10物件(取得価格127億円:物件全体の取得価格の7.9%)が固定賃料となっている。固定賃料の物件については賃料の不払いがなければ基本的に稼働率低下の影響は同投資法人の業績に影響を与えないこととなる。
「星のや」、「リゾナーレ」、「星野リゾート 界」、「チサン イン」「ANAクラウンプラザホテル」等の50物件については固定賃料+変動賃料となっており、稼働率が低下しても一定の賃料が保証されるものの、稼働率低下に伴い変動賃料の額が減少することから、同投資法人の業績への影響を与える。なお、変動賃料は施設売上をベースに計算される物件が31物件(取得価格354億円:物件全体の取得価格の21.9%)、施設利益をベースに計算される物件が19物件(取得価格975億円:物件全体の取得価格の60.3%)となっている。施設利益をベースに変動賃料が計算される物件のほうが賃料のボラティリティが高いと考えられることから、同社の保有する物件の多くの物件の賃料は比較的稼働率の影響を受けやすいと考えらえられる。
「ハイアットリージェンシー大阪」1物件(取得価格160億円:物件全体の取得価格の9.9%)については完全変動賃料となっており、施設利益をベースに変動賃料が計算される。同物件の賃料については2021年4月期の賃料については0円と見込まれている。2020年10月期において同物件の変動賃料は245百万円あったことを考えると、1物件だけでも同投資法人に与える影響は大きい。

星野リゾート・リートの保有物件の変動賃料

施設売上をベースに計算される変動賃料においては2020年10月期においては2019年4月から2020年4月までの期間の、2021年4月期においては2019年10月から2020年9月までの期間、2021年10月期においては2020年4月から2020年3月の売上を基準売上とするため、緊急事態宣下において大幅に稼働が低下した2020年4月及び5月を基準売上の期間に含む2021年4月期、2021年10月期は同投資法人の受取る変動賃料が低下するものと考えられる。
また、利益連動型の物件の賃料は、2020年10月期においては2018年12月から2019年11月までの期間、2021年4月期においては2019年4月から2020年5月までの期間、2021年10月期においては2019年12月から2020年11月までの期間の各物件の利益を基準利益として変動賃料が算出されることから、利益連動型においても大幅に稼働が低下した2020年4月及び5月を基準売上の期間に含む2021年4月期、2021年10月期が緊急事態宣言による影響を受け、受取る変動賃料が大幅に低下する時期と考えられる。
2020年7月以降については星野リゾート運営物件の業績が回復しているが、当該影響があらわれるのは2021年10月期からということになり、それ以降に当該V字回復やGo To トラベルキャンペーンの恩恵を受け同投資法人の業績は回復するであろうと考えられる。

星野リゾート・リートの財務状況と経営指標

同投資法人の直近決算である2020年4月期の財務状況をを見ると、総資産は対直前決算期である2019年10月比で5,608百万円増の178,572百万円となっており、主な増加要因は2020年1月31日に星野リゾートグループの運営する「BEB5 軽井沢」を取得したことにより2,170百万円、星野リゾートグループ以外の運営する「ソルヴィータホテル那覇」を取得したことにより3,860百万円増加したこと等により有形固定資産が5,782百万円増加したことが主な要因である。
純資産は29百万円増加の105,689百万円となっており、主な増減要因は2,951百万円の当期純利益を計上した一方、2,922百万円の剰余金の配当を行ったことによるものである。前述の通り、REITにおいては当期純利益のほとんどを配当することから利益が一定な状況においては増資等がない限り純資産の金額はほとんど増減しない。
自己資本比率は対直前決算期1.9ポイント下がって59.2%となっている。また。有利子負債については6,003百万円増加の67,758百万円となっており、総資産有利子負債比率が2.2ポイント上昇して37.9%おり、前述の2物件の取得は借入によって取得されたものだということがわかる。なお、不動産投資においては総資産有利子負債比率はLTV(Loan to Value)と呼ばれ、投資の安定性をあらわす指標として用いられる。計算式で用いられる総資産は帳簿価格を用いる場合と時価を用いる場合があるが、今回の場合は全社によって計算されたLTVである。直近の決算を見ると、同業種のジャパン・ホテル・リート投資法人<8985>は40.6%、インヴィンシブル投資法人<8963>は51.0%、森トラスト・ホテルリート投資法人<3478>は49.1%、いちごホテルリート投資法人<3463>においては43.6%となっていることから、同投資法人のLTVは37.9%と比較的低く、他の投資法人との比較では安定性が高いと考えられる。
収益性については、対直前決算期比で売上高は72百万円増加の6,158百万円、営業利益は69百万円増加の3,399百万円、当期純利益は29百万円増加の2,951百万円といずれも増加しており、追加で取得した物件の収益が寄与したものと思われる。
また、不動産投資において収益性を比較する指標としてNOI利回りがある。NOIとは「Net Operating Income」の略で、「営業純利益」を意味し、算出方法は必ずしも一定ではないが、同投資法人においては賃貸NOIを「不動産賃貸事業収益-不動産賃貸事業費用+減価償却費+固定資産除却損」で計算しており、それを不動産価格で除した数値がNOI利回りとなる。直近決算の同業種のNOI利回りはジャパン・ホテル・リート投資法人<8985>は6.7%、インヴィンシブル投資法人<8963>は1.3%、森トラスト・ホテルリート投資法人<3478>は2.7%、いちごホテルリート投資法人<3463>においては3.1%となっており、同投資法人の6.7%は高く見えるが、決算期が異なることから新型コロナウィルスの感染症拡大の影響を織り込んだ決算と、織り込んでいない決算があるため単純な比較は難しい。
なお、同投資法人においては、2020年4月期決算においては新型コロナウィルスの感染症拡大の影響は全く受けておらず、2020年10月期から当該影響が表れることとなっている点に注意が必要である。

星野リゾート・リートのカタリスト

同投資法人におけるカタリストとしては、Go To トラベルキャンペーンの延長が考えらえられる。Go To トラベルキャンペーンは新型コロナウィルスによって落ち込んだ消費を回復させるため2020年7月22日から政府が実施しているキャンペーンであり、旅行代金の35%を旅行代金から割引になるキャンペーンである。また、10月からは旅行代金の15%分の地域クーポンがもらえることとなり、実質的に旅行代2020ね金の半分が補助される制度であり、旅行業界の景気回復につながっている。このキャンペーンは2021年1月末までで終了する予定であったが、実施時期を2021年5月まで延長する方向で政府で検討されていることが明らかになった。Go To トラベルキャンペーンにより、高価格帯のホテルが人気となっており、星野リゾートグループの運営するホテルにおいては7月以降昨年同等以上の実績をあげている。したがって、当該キャンペーンが継続されることで、同投資法人の業績への期待が高まるであろう。一方で、コロナウィルスの感染症拡大による第3波の懸念から、Go To トラベルキャンペーンの中止を呼び掛ける声もあるため、当該キャンペーンの中止は同投資法人の業績に悪影響を与えることになると思われる。
また、新型コロナウィルスの感染症拡大の影響が同投資法人の決算への反映もカタリストになると思われる。先述の通り、同投資法人の決算に新型コロナウィルス感染症拡大の影響が反映されるのは2020年10月期以降と、実際の動向とはタイムラグがある。そのため、現在決算の決算予測が公表されている2020年10月期以降の2021年4月期においても、緊急事態宣下において大幅に稼働が低下した2020年4月及び5月を基準売上の期間に含むため、2021年4月期も期待ほど決算予測はよくはない可能性がある。従って、今後順調に旅行業界の景気が回復していった場合、2021年10月期以降からの決算が期待できるということになることが考えられ、変動賃料の計算の基準期間と反映されるタイミングを意識することが必要であろうと考える。
最後に、星野リゾートグループが運営する物件割合の増加が考えられる。星野リゾートグループが運営する物件はマイクロツーリズム需要を取り込み、三密を避けた宿泊施設としてコロナ禍においても稼働は順調であり、インバウンド需要に頼らずとも高稼働が期待できる宿泊施設である。現在30%程度のである星野リゾートグループが運営する物件割合が同投資法人が目標として掲げる50%超となってくることにより、星野リゾートグループに運営する物件の人気とともに、同投資法人の投資口も人気が高まる可能性があると考えられる。