証券コード7552 ハピネットについて、今期および来期にわたる業績予想について紹介する。同社は1969年に有限会社トウショウとして玩具の卸売事業で創業し、1991年に現社名に変更、2000年に東証プライム市場に上場している。玩具事業、映像音楽事業、ビデオゲーム事業、アミューズメント事業の4事業を展開しており、主力の玩具事業が売上高全体の42.8%,映像音楽事業が18.5%, ビデオゲーム事業26.8%、アミューズメント事業が11.9%を占める。
玩具事業では、メーカーと小売業者の間に立ち、商品の需要予測を行い、在庫リスクを負うことで付加価値を生む中間流通業を展開している。特にバンダイ社との関係が強く、玩具事業売上高の約50%をバンダイ社の商品が占める。「一番くじ」や「ワンピースカードゲーム」などのトレーディングカードを中心に好調に推移しており、2024年3月期は増収増益を達成している。
映像音楽事業では、主に映像・音楽パッケージソフトの中間流通業を展開し、業界27%のシェアを有し、国内映像音楽の中間流通シェアを事実上独占している。近年は独自の映像作品の製作・配給にも注力しており、A24社との独占パートナーシップ契約締結など、収益源の多角化を進めている。自社企画グッズの好調により収益率は改善傾向にあるが、少子化やデジタル化を背景に市場が縮小傾向にあり、減収増益となった。
ビデオゲーム事業は、任天堂やソニー・インタラクティブエンタテインメントのゲーム機・ソフトの中間流通や自社製品の開発を行っている。任天堂販売社と同社を合わせた国内任天堂社関連製品の取扱いシェアは約100%を占める。任天堂の大幅な減収減益の影響を受けたが、自社開発製品の売上高は順調に成長している。
アミューズメント事業では、カプセル玩具の自動販売機運営と専門店「gashacoco」の展開、アミューズメント施設用商品等の販売を行う。インバウンド需要の増加も追い風に大幅増収増益となっている。ガシャココは2024年3月末時点で直営94店舗、FC11店舗展開し、2025年3月期末時点で直営店舗114店舗,FC店舗41店舗の拡大を見込んでいる。
直近の決算は11月に開示された2025年2Q決算であり、玩具事業、アミューズメント事業を中心に成長し増収増益となった。
上記が今回行った業績予想である。
玩具事業は売上高の内訳としてバンダイ社、タカラトミー社、その他メーカー、同社オリジナル商材の売上高が開示されている。バンダイ社売上高と同社バンダイ社商材売上高は強い相関関係にあり、バンダイ社売上高予想に基づいて予想した。タカラトミー社においては、同社におけるシェアが約10%と低く、タカラトミー社の業績好調を牽引する商品を網羅できていなかったため、過去売上高の連動は確認できないが、今期はベイブレードXが好調に推移するなど、タカラトミー社売上高に連動して同社タカラトミー社商材売上高が増加しているため、この傾向が続くと判断しタカラトミー社売上高予想に基づいて予想した。同社オリジナル商材においては、24年3月期3Qにブロッコリー社の損益計算書を連結し、売上高が大幅に増加した。オリジナル商材売上高とその他メーカー売上高は過去の推移から予想した。
映像音楽事業では、映像メーカー事業において、2025年3月期から独占パートナーシップを締結したA24との協業を本格的に開始する予定であり、日本で10月4日公開されたA24作品「CIVILWAR」で幹事を務めた。アメリカでは興行収入は2週連続で1位となったが日本では初週のみにとどまった。映像、音楽卸売事業においては、デジタル化への移行で市場が縮小傾向にあるため、過去の傾向を基に数値を置いた。
ビデオゲーム事業においては、任天堂社商材がビデオゲーム事業売上高の約75%を占め、任天堂社の業績に大きな影響を受ける。ダウンロード販売への移行で市場が縮小傾向であることに加え、ニンテンドースイッチが発売から8年目に突入したため、減収を見込んでいるが、任天堂社が2025年3月末までに後継機に関する詳細情報の開示を発表しているため、2026年3月期に後継機が発売されることを前提にモデルを作成した。SIE商材とその他売上は過去の傾向から数値を置いた。
アミューズメント事業においては、ガシャココの店舗展開が順調に進んでおり、平均15百万円ほどの初期費用を約1年で回収可能であるとことを考慮し、カプセル玩具事業のモデルを作成した。その他事業ではポケモンカードゲームのアミューズメント事業の取引先への販売増が売上の大幅伸長に寄与しており、今期もこの傾向が続くと予想し数字を置いた。
以上の予想と会社予想、四季報予想との比較を以下に示す。
我々の予想では2025年3月期の予想は売上高、経常利益ともに会社予想、コンセンサスを上回り強気な予想となった。今回行った予想では、26年2Qに任天堂がニンテンドースイッチ後継機を発売することを念頭に作成しているため、発売時期によって売上高の変動が起こるだろう。また、バンダイ社は2025年4月からの価格改定(約3~43%の値上げ)を発表した。現時点では同社のみの値上げをモデルに反映させているが、市場環境を考慮すると、競合他社も追随する可能性が高く、2026年3月期の大幅な売上高増が期待される。
同社は決算説明資料で各事業の在庫関連指標(在庫処分額、在庫金額、在庫回転率)を開示している。特に成長事業である玩具事業において、在庫金額の抑制と回転率の改善が見受けられる。同社のビジネスモデルは在庫リスクの適切な管理が収益性に直結するため、この改善は今後の収益拡大に向けて好材料といえる。また同社は、M&Aの実施やガシャココの展開を通じて、従来の卸売事業から高収益な自社プロダクト/ビジネスモデルの開発へと注力している。これは商社からIPホルダーへの転換を示すものであり、今後は確立された流通網と自社プロダクトを掛け合わせたクロスセルにより、さらなる収益拡大が期待できる。投資判断を下す際にはこのような点を踏まえた上で慎重に判断する必要があるだろう。