オルタナティブデータを使って分析してみた~新型コロナと求人・外出動向~

オルタナティブデータを使って分析してみた~新型コロナと求人・外出動向~

PERAGARU管理人

オルタナティブデータの活用方法

欧米やシンガポール、香港等のヘッジファンドを中心に投資判断への活用が進んでいるオルタナティブデータを用いて、本記事では新型コロナによるマクロ経済への影響を分析する。オルタナティブデータの定義や種類、個別銘柄分析への活用についてはこちらの記事を参照されたい。
そもそもオルタナティブデータの収集・紐付け単位はマクロ、個別銘柄の2つに分けることができるが、分析対象も同様の分類が可能である。当該分類を整理したものが下図である。

例えば、鳥貴族の待ち時間のデータは個別銘柄に紐づいたデータであるが、鳥貴族の分析だけでなく、緊急事態宣言後の外食需要の回復度合いの調査にも活用できる。一方で、全国の人流データは特定の銘柄に紐づいてはいないが、外食需要全体を捉えるだけでなく鳥貴族のような個別企業の分析にも活用できる。

新型コロナと求人

新型コロナが企業の求人意欲に与えた影響について、3991 ウォンテッドリーと4849 エン・ジャパンのオルタナティブデータを使って分析したい。
下図はエン・ジャパンに掲載されている求人件数のデータである。グラフを見ると、第一回緊急宣言以降は2021年7月前後を除いて増加傾向であることが読み取れる。2022年1月の蔓延防止措置発令の月に求人件数はやや低下したものの、第一回緊急事態宣言直後ほどの低下は見られない

続いて、ウォンテッドリーの有料契約社数が下図である。

同社も新型コロナが初めてニュースになった2020年1月から同年夏にかけて有料契約企業数が激減している。一方で、それ以降は同指標が一貫して上昇トレンドであることが読み取れるだろう。
以上より、第一回緊急事態宣言発令直後は企業のリスク回避意向が色濃く反映され、求人マーケットは厳しい状況となったが、徐々に新型コロナへの警戒が薄れ、企業の求人意欲が増加してきていると言えるだろう。今後も新型コロナ関連のニュースが話題になることも多くあると予想されるが、企業求人への影響は限定的となる可能性が高いと想定できる。

新型コロナと外出動向

続いて、2695 くら寿司と7074トゥエンティフォーセブン、6046 リンクバルのオルタナティブデータを用いて、新型コロナが日本居住者の外出動向に与えた影響について分析する。
下図はくら寿司の待ち時間のデータである。

上図からは、第一回緊急事態宣言が発令された2020年春より待ち時間が減少した(≒来店者数が減少した)こと、2020年夏頃よりGo Toトラベルの実施などの政府による外出制限の緩和が進むにつれ待ち時間が急増した(≒来店者数が急増した)ことが読み取れる。直近は蔓延防止措置解除により待ち時間が増えている。

また、下図はパーソナルジムを運営するトゥエンティーフォーセブンの予約不能店舗数(≒人気で予約が取れない店舗数)のデータである。

これはくら寿司同様に、第一回緊急事態宣言明けの2020年夏に同宣言前以上の水準まで需要が増加したと考えることも可能である。それ以降、同データは右肩下がりであるが、第一回の緊急事態宣言では外出しない人が多く、宣言で肥えた体を鍛えにパーソナルジムに行く人が増えた一方、時間の経過と共に公園でのランニング等、外での運動への抵抗が薄れていることが、同データの動きの要因の1つとして考えられるだろう。
また、下図は街コン紹介サイト「machicon JAPAN」(リンクバル運営)の街コン掲載数データである。

これを見ると、街コンはコロナを機に激減してコロナ前の水準には一度も戻っていないことが分かる。このデータの背景として 不要不急の外出自粛の定着や、マッチングアプリ等のオンライン出会い手段の普及が考えられるだろう。

オルタナティブデータを活用した新型コロナの影響分析まとめ

本記事ではオルタナティブデータを活用して企業の求人と居住者の外出動向を分析した。本分析のまとめを以下に記載する。

  • 企業の求人ニーズは恒常的に存在し、今後は新型コロナの影響で大きく求人を抑えるという方針を取る企業は多くない。
  • 外食産業は政府が営業時間を直接制限したり、メディアの風当たりも強いため、今後も新型コロナの動向と業績が大きく相関する。
  • 新型コロナにより慣習が変化した業界(街コン→マッチングアプリ、出社→zoom会議など)も多数存在し、当該変化に対応できない企業の業績は厳しい。

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