自動車銘柄位置情報データの紹介

自動車銘柄位置情報データの紹介

PERAGARUアナリスト

PERAGARUでは、ブログウォッチャー社との提携により、上場企業150社に関する位置情報データを提供している。このデータには、各企業に紐づく拠点の総滞在時間と総滞在人数の2つの指標が含まれており、販売店舗への来客状況や生産工場の稼働状況の把握に活用できる。本レポートでは、PERAGARUで位置情報データを提供している150社のなかから、自動車メーカーの位置情報データについて紹介する。

データ概要

ブログウォッチャー社の「プロファイルパスポート」は、国内最大規模(月間アクティブユーザー約 3000 万人)の位置情報データサービスで、同意を得たユーザーのスマートフォンアプリから得られるGPSデータを、特定の個人が識別されない形で提供している。
この人流統計データを、上場企業の所有する工場や販売店舗の位置情報と紐づけて加工・集計することで、対象企業の経済動向を把握することができる。
PERAGARUでは、自動車メーカーに関する位置情報として、各企業の生産拠点に滞在した人数の総滞在時間と総滞在人数を計測しており、これによって各社の自動車生産工場への労働投入状況を把握することができる。図1に各自動車メーカーごとの拠点総滞在時間の推移を示した。各系列の比較を容易にするため、縦軸は2022年1月を100として指数化している。ここでは、以下の7社の自動車メーカーを対象としている。

  • 7201 日産自動車
  • 7203 トヨタ自動車
  • 7211 三菱自動車工業
  • 7261 マツダ
  • 7267 本田技研工業
  • 7269 スズキ
  • 7270 SUBARU
図1 自動車メーカーの拠点総滞在時間の月次推移。スケールは2022年1月を100として指数化している。

滞在時間と生産台数

データの有用性を確かめるため、各企業の滞在時間と月次生産台数(※1)の比較を行った。図2に各企業の滞在時間と生産台数の前年同月比の系列を示す。

図2 メーカーごとの国内生産台数前年比(青)と拠点総滞在時間前年比(橙)の比較。スケールは標準化したもの。

図2を見ると、日産自動車を除く6社で、国内生産台数と滞在時間に正の相関があることがわかる。相関の強さには多少ばらつきがあるものの、増減のタイミングはおおむね一致しており、滞在時間データが生産台数の推計に有用であることがうかがえる。これは、過去に大手携帯キャリアのGPSデータを用いて自動車生産量を推計した研究(※2)の結果とも矛盾しない。
本レポートでは、シンプルに全拠点の滞在時間を単純合計した総滞在時間を用いて比較した。より精度の高い推計を行うには、過去の研究(※2)で実施されているように生産量の推計に適した工場や時間帯のデータに絞るなどの加工を施すことが有効であろう。特に、日産自動車に関しては、日産自動車九州や日産車体など生産能力の高い工場が含まれておらず、これが相関係数が低くなる一因となっている可能性もある。PERAGARUでは、今後、このような拠点滞在時間データの追加取得や時間帯別の集計など、より詳細な分析にも取り組んでいく予定である。

※1 引用元はMarkLines Data Center
※2 水門 善之, 田邊 洋人, GPS データに基づく自動車生産量のリアルタイム推計値の株式投資における有効性, 人工知能学会第二種研究会資料, 2022, 2022 巻, FIN-029 号, p. 09-13

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