証券コード2820やまみについて、今期及び来期の業績予想について紹介する。同社は1975年1月広島県三原市にて野菜のパック詰め事業を創業し、2016年6月に東証ジャスダックに上場している。その後2023年10月に東証スタンダード市場に移行している。同社は豆腐及びその関連商品である厚揚げ、油揚げ等の製造、小売業、卸売業に対する販売を行う豆腐等製造販売事業を主たる事業としており、この事業が売上高全体の100%を占める。
同社は大豆、フィルム、トレイ、副資材(にがり等)を仕入れ、様々なサイズの豆腐、厚揚げ、油揚げ等を製造し、小売業、卸売業といった法人顧客に対して製品を販売している。
同社によると2000年ごろまでは豆腐メーカー全体で約16,000事業所であったが、2022年時点で約3,000事業所と年間1,000事業所以上減少し続けている。これは近年、製品の販売先である小売業者の大規模化によるスケールメリットの享受、小売業者による物流センターを保有、品質管理精度の向上により、豆腐メーカーに高度な衛生管理と大量納入・コストダウンが要求され始めたことが原因とされている。これを契機に大手メーカーを中心に機械化が進んだことでコスト、価格競争が激化し、小規模事業者が市場から淘汰されている。また2021,22、23年における円安の進行や大豆価格の高騰による原材料費の上昇もこの傾向を後押ししている。
同社の売上高は広島県の本社工場が約49%、関西工場が約36%, 富士山麗工場が約15%を占め、西日本での販売が中心だが、2019年に静岡県に富士山麗工場を新設し、関東地方での販売に注力している。24年6月期上半期では、富士山麗工場単体での黒字化を達成し, 今後も売上を伸ばす見通しであるため、関東地方での売上高成長率は特に注目すべきである。
直近の決算は2024年5月15日に発表された2024年6月期3Q決算であり、売上高、営業利益ともに増収増益で着地した。
上記が今回行った業績予想である。
原材料費高騰に対処する価格改定効果と「北海道とよまさりシリーズ」をはじめとした国産大豆を原材料とする高付加価値商品の販売数量増加によって引き続き売上高が成長すると予想し、YoYで売上高が本社工場で10%,関西工場で15%,富士山麗工場で30%成長を見込みモデルを作成した。同社によると3年前から春・秋2回に10%を目標に価格改定の交渉を進めているが、販売先によって価格が異なり、大手メーカーのように希望が通らないこともあるようだ。また国産大豆の使用は材料費の大幅上昇を伴うが、平均購入単価の増加をもたらし、売上及び利益の拡大につながっている。2024年春の新商品として、外国産大豆を使用していた既存商品を国産大豆製品にリニューアルしていることからうかがえる。さらに同社によると、各工場の稼働率が本社工場・関西工場が70%,富士山麗工場が60%とのことで生産能力にも依然余裕があることが確認できる。また同社は1年に1度、原材料を一括で発注予約するため、発注月の大豆価格と為替レートに注目する必要がある。2024年4月現在、外国産大豆価格は下落基調であり、原材料費のピークアウトが考えられるが、同社によると2023年3月に購入した大豆を24年6月期3Q/4Q、2025年6月期1Q/2Qに使用する予定であるため、売上高原材料費率は23年6月期と同水準の42.5%~43%と予想した。23年6月期Q4,24年6月期Q1,2において光熱費が減少しているが、これは政府の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の実施により、電気・ガス代が削減されているためである。この政策は2023年1月から開始され、24年5月までの予定となっている。光熱費の減少は一時的な政策によるものであるため23年6月期Q3の売上高光熱費率はQ1,2と同水準の8.5%,Q3以降は13%と予想した。
以上の予想と会社予想、四季報予想との比較を以下に示す。
我々の予想では24年6月期の予想は売上高、営業利益ともに会社予想、四季報予想をやや上回っておりやや強気な予想となった。
今回行った予想では、賃上げによる労務費の増大、電気料金値上げによる光熱費の上昇と24年6月期、25年6月期に予定される生産能力増強のための1,300百万円規模の設備投資による減価償却費の上昇を売上原価の予測モデルを作成する際に考慮している。
投資判断を下す際にはこのような点を踏まえた上で慎重に判断する必要があるだろう。